時刻は20:18
まだお母さんは目を覚まさない。
私たちは家に帰り、ご飯をパパっと用意した。
そして、ずっと無言だったからか、お兄ちゃんが沈黙を破った。
すると。
《えぇ……また、通り魔事件が起きました。
被害者は現場付近に住んでいる女性です。…………》
アナウンサーが重い表情でニュースを伝えていた。
お母さんのことだ。
《現在犯人は逃走しており、警察は捜査を進めています。
では、次のニュースです。》
お兄ちゃんはテレビを消した。
それから、私たちはまた無言でご飯を食べた。
ただでさえ、中々帰ってこなくて何を話したら良いのか分からないのに、こんなときに話せるわけないし。
私たちは車に乗り、病院に向かった。
”ガラガラ”
お母さん……
目…覚まして……
飲み物なんか飲む気にならない。
え………
おかあ…さん?
ゆっくりお母さんの瞼が動く。
あ!ま、まずは先生呼ばないと!!
お母さんは不幸中の幸いで意識を取り戻した。
お母さんは詰まりながらそう言った。
お父さんたちが出ていって私はベッドの横の椅子に座った。
え………
お母さんが謝るなんて…
ってことは、もしかして………
聞かれてた?
本当はこんなこと言うつもりじゃなかったのに、思わず、口に出していた。
違うの。
別に私はお母さんに謝って欲しかったんじゃないの。
ただ………
涙がポロポロと頬を流れる。
私は溢れだす涙をこらえきれずに、勢いよく病室を出た。
”ドンッ”
あ、そうだよね……
私たちは病院のベンチに座った。
私はお母さんと話したことを全て話した。
そして、思わず悠真さんに抱きついてしまった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。