"ピコンッ"
あ、お母さんからだ。
『もう少しで着くと思う。』
私は
『分かった!』
と打ち、送信ボタンを押した。
本当にお母さんは変わった。
まるで、別人のように。
出張のお土産はおいしいものや限定品だけではなく、可愛いシュシュやハンカチなども買ってきてくれるようになった。
それに………何よりも嬉しかったことは……………
誕生日、一緒に出かけようって言ってくれたこと。
私の誕生日は今月末、11月30日。
月末は仕事が忙しいみたいで、昔は帰ってこれない日もあった。
お手伝いさんと一緒に過ごした日もあった。
帰ってこれても、夜だけ。
そんなお母さんが、仕事をずらしたから、昼から一緒に出かけようって言ってくれた。
私はすごく嬉しかった。
何よりも嬉しかった。
私は来週の誕生日が楽しみになった。
今日はどこにも行かないけれど、家でゆっくりしようという話になっている。
"ピーンポーン"
あ、お母さんだ。
"ガチャ"
お母さん………
嬉しいよ。
私、もう高校生だけど、お母さんがいると嬉しいよ。
"プルルル………"
お母さんの携帯がなった。
お母さんは私に「ごめんっ。」という仕草をして、リビングを出た。
少しして………
いいよ。
誕生日の日が一緒に過ごせるなら。
それでいい。
さて、またテストが近づいてきたし、勉強しよう。
ーーー2時間後ーーー
お母さん、喉乾いたかな。
コーヒー持っていこう。
私はコーヒーをお母さんのマグカップに注いで、お菓子と一緒におぼんにのせ、階段を上った。
お母さんのパソコンを打つ音が聞こえる。
"コンコン"
"ガチャ"
えっ!?
"ガチャ"
紙袋の中か………
うわぁ!!
可愛いワンピース!!
あれっ?
紙が落ちてる。
検査表?
○○病院…………って大きい病院じゃん!!
がん検査…………?
え、どういうこと…………
私はとっさに検査表をお母さんのバッグに入れた。
がん…………
なの?
死なないよね?
どういうことなの…………?
~作者から~
お母さんのアイコンつけました!!
いつも、見てくださっている方、⭐や❤してくださる方、本当にありがとうございます!!
これからもよろしくお願いいたします!!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!