次の部屋にもその次の部屋にも
その白銀の美少女はいた
あるところでは窓枠に座り本を読んでいる姿
あるところではソファーに座りうたた寝をしている姿
あるところでは誰かに向かって微笑んでいる姿を
一つ一つ精巧に作られており生きていると言ってもおかしくないほどの人形は造り手の狂気を感じた
そうして次の部屋に入った
そこは暗闇だった
廊下から入るあかりが恐らくベッドの端を照らすが広い寝室のようで奥は全く見えなかった
伏黒くんがパチリと電気をつけるとそこには
全裸の美少女がベッドの上に横たわっていた
私は慌てて伏黒くんの目を覆った
覆った手をさっさと外されてスタスタとベッドへ近づく伏黒くん
そう思いながらベッドに近づくと
遠くから見ると服を着ていないだけかと思っていたが
それは暴行を受けた美少女だった
体のあちらこちらに赤い鬱血痕があり
恐らくそういうことをしたのであろう痕跡
乱れた髪は芸術品のようにベッドに広がり輝きを放ち
赤い唇は更に赤くうっすらと血を滲ませ
頬はそういうことをした後なのかほんのりと赤く染めあげて
白銀のまつ毛は涙を染み込ませ
空色の瞳は涙で濡れ怪しい色気を出していた
この人形は今まで以上に人間味を感じさせる芸術品だった
まるで息をしているかのようにそこに存在していた
寝室の奥にもうひとつ扉があった
伏黒くんが扉をあけた
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。