手足から少しづつ潰していくことにした
呪霊のため中々潰すのは難しいが上手にできていると思う
悲鳴のような呻き声が聞こえるけど別にどうでもよかった
牢屋の半分まで溜まっていたドロドロを無くした
床に足をつき呪霊を眺める
牢屋から逃げようとする呪霊を鉄格子で覆った
そう言って呪霊を鉄格子に押しこんでみた
ギチギチと音がする
悲鳴のような呻き声は続く
ブシュと1部の身体が内容物を守りきれず飛び散る
飛び散る液体はじゅわっと床の1部を溶かす
もっともっと潰さないと
脳裏に焼き付いた
爆ぜたトマトのように
この先起こる未来を想像すると面白くてしょうがなかった
またブシュっとどこか耐えきれずはじける
ミシミシと音が鳴る
悲鳴のような呻き声はまだ元気よく響く
心が軋む音がする
ボタボタと体液が床に広がっていく
悲鳴のような呻き声は少しずつ小さくなってきた
止めてあげると小さく懇願するような呻き声をあげる
遠くの方から
伏黒くんの声と光が近づいてくる
ぶしゃっ
呪霊もトマトのように爆ぜた
面白くて笑ってしまう
人も呪霊も似すぎている
一体何を境界線にして分けられているのだろうか
伏黒くんが懐中電灯を私に照らす
鉄格子の中から伏黒くんの方へ近づく
この牢屋出口の扉とかついてないんだけどどうしよう
そう考えていると伏黒くんが声をかけてくる
鉄格子を挟んで私たちは見つめ合う
眉間にシワを寄せてじっと見つめてくる伏黒くん
心が軋む音がする
伏黒くんとオオカミは唸るように私を見て構える
心が軋む音がする
心が軋む
私が違う世界の人間であること
彼はこれが知りたいんだろう
でもこれは言いたくない
鉄格子を握り伏黒くんに近づく
身体を鉄格子に添わせて
私はずるい人間
五条先生のように伏黒くんにも決めさせる
考えるのが嫌になってきた
にっこりと笑いそう聞いてみた
心が軋む
どこかブシュと音をたて漏れた気がする
鉄格子の中から伏黒くんを見つめる
心が軋む
声にならない悲鳴を上げている
ボタボタと零れていく
野薔薇ちゃんの声が遠くから聞こえる
鉄格子の外から私をみる伏黒くんは
得体の知れないものを見るように見ていた
もう考えるの疲れたな
心が軋む
声にならない悲鳴は小さくなっていく
伏黒くんは目を見開いた
私は笑った
心が爆ぜる
私はなんなんだろうね
こちらに近づく同級生たち
宿儺さんの声がする
野薔薇ちゃんが懐中電灯を照らしながら私の手を握る
暖かい手だった
そう言って鉄格子を広げようとする虎杖くん
目と口だけ虎杖くんの頬からのぞかせ声をかけてくる宿儺さん
ボタリボタリと爆ぜた心が垂れ落ちる
得体の知れないものを見る目で
私を見てくる伏黒くん
私に近づこうとする同級生を怒鳴る伏黒くん
私はそっと鉄格子から手をはなし
牢屋の奥で壁にもたれるように座り込む
考えるのが疲れた
私もその余興を眺めることにした
心が垂れ落ちる
同級生がみんな私を見る
私はにっこり笑った
垂れ落ちる内容物もなくなった
私は誰なんだろうね
面白い余興だ
人はなんでこんなに感情をもてるのだろう
何も分からない
私は誰?
虎杖くんの身体に模様が浮かぶ
そう言って宿儺さんが呪力で鉄格子を曲げる
曲げた鉄格子から身を滑り込ませ
私の前に座る
目の前で宿儺さんは虎杖くんに変わる
心配そうに私を見てくる虎杖くん
そして立たせてくれようとしているのか手を差し出されるためその手を握る
これは私が求める手じゃない
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。