長い階段を降りていく
地下のせいかじっとりとしているが薄ら寒いそんな空間
階段を降りていると異臭が鼻につく
降りるほど異臭は強くなる
それと同時に嫌な予感を感じ、緊張が体全身を巡る
階段を降りきると奥が照らされないほど長い通路と
その左右には牢屋のような部屋が並んでいた
伏黒くんが降りてすぐの右の牢屋を照らすように指示する
言われたようにそこを照らすと
そこにはおそらく血と思われるものがぶちまけたように壁にこびりついていた
時間はたっているはずだが妙に生々しさを感じた
じゃあそれまで
いなくなった人は……
いやまだ真実は分からない
そこから鉄格子を一つ一つ照らして確認したけど
何も無ければさっきのように血の跡らしきものがあったり
骨のようなものがあったり
腐った何かがあった牢屋もあった
歩いていると遠くから小さい声が聞こえる
ぱっと伏黒くんを見るといくぞと言われ
慎重に先をすすむ
その声はかすれて消え入りそうな声だった
声のする方へ懐中電灯を照らしながら探していると
それは急に映りこんだ
人が牢屋にめり込むように押し付けられていた
皮膚は裂け
肉が牢屋の外に
むきエビのように
ぷるっと押し出されていた
目玉も鉄格子の間から出てきているが
押し付けられていることで
頭蓋骨から押し出され
血を流しながら取れそうなほど
飛び出していた
あまりの悲惨さに言葉を失いかけたが
まだ生きている
すぐに助けようとおもい
その肉塊になりかけている人に声をかけ手を伸ばした
襟首を捕まれ引っ張られると同時に
押し付けられていた人は潰れたトマトのように鉄格子の外に勢いよく爆ぜた
言葉にならない声が支配する
鉄格子の中にいたそれは鉄格子を壊し
私たちへ襲いかかる
私は横へ避けたが視界が真っ暗になった伏黒くんは私の名前を呼ぶ
呪霊は私の方を見ていた
伏黒くんはこの真っ暗の中では何も見えていないため
そう言い来た道の方へ走った
誘われるように呪霊は私を追いかける
伏黒くんが私を呼んだ気がするけど
今は無視することにした
呪霊は牢屋を破壊しながら迫ってきた
醜悪な様をした呪霊に向き合い
手をかざしその肉体の1部を潰した
足を潰された呪霊は勢いよく転ける
足を復元している呪霊を天井から見下ろす
なおし終わるとすぐに手が伸び私がたっていた場所に穴が空く
穴が空いた部分は嫌な匂いをしながら一部溶けている
あの身体に触れると溶かされる可能性があるため
伏黒くんと距離をとって正解だった
そう思っていると目の前に鉄格子が降りる
鉄格子が降りたと思ったら牢屋に私はいれられていた
笑い声のような呻き声をしながら呪霊は牢屋の中にいた
呪霊はドロドロとその体を溶かした
そのドロドロは足元にきて靴を1部溶かした
すっと宙に浮くと
笑い声のような呻き声をしながらまだ溶ける
おかしい鉄格子の牢屋なのに
ドロドロが牢屋内に溜まってきているのだ
牢屋と通路の境目に見えない壁があるかのように溜まっていく
時々ドロドロの液体を私に飛ばしてくるため
避けるが壁にあたり小さいドロドロが服に穴を開け当たった部位は火傷のようになっていた
この呪霊は私が少しずつ追い込まれている様子を見て喜んでいるのだ
私の心が冷めていくのを感じる
私は呪霊を
少しずつ潰し始めた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。