優しい手が私を撫でる
私はこの手を知っている
宿儺さんの膝に頭を乗せていた私は
その温もりを享受する
面白そうにそう言われる
どういう意味なのかよく分からなかった
ふと皆が心配していたのを思い出し思い体を起こし周りを見渡す
骸の上に建つ社
私がいた世界の事を言ってるんだと分かった
胸がズキリと痛む
最近忙しいのか会えていない背の高い頼もしい先生の姿がよぎる
優しい手から身体を離す
頬杖をついて座っている宿儺さんは
みんなの顔を思い出すと心が暖かく感じた
毎日がとても楽しく感じたあの日々が
私の場所となったんだと思う
宿儺さんを見ると
とても冷めた目で私を見ていた
冷えた視線を感じる
こわい
だけど皆のとこに帰りたい
冷めた目が怖い
だけどなんでそんな目で見られないといけないの?
だって
宿儺さんが
両面宿儺が
私は背を向け走り出した
みんなのとこに帰りたい
あの暖かい日常に
無我夢中で走る私の背に声が聞こえる
耳を塞ぐ
怖い怖い!私を呪う声がする
みんなに会いたい
私は強く願った
みんなのとこに帰りたい
強い光が
暗い世界を照らす
私の帰る場所はあそこなんだ
まっすぐ走り出した
1人残る声はもう聞こえなかった
暗い中で骸の上で頬杖をつく呪いの王は
冷めた目を閉じた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。