第37話

枷ってなに?
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2021/07/09 11:56


優しい手が私を撫でる
(なまえ)
あなた
宿儺さん……
私はこの手を知っている

宿儺さんの膝に頭を乗せていた私は

その温もりを享受する

両面宿儺
両面宿儺
オマエは自ら枷をはめるのが好きなようだな


面白そうにそう言われる


(なまえ)
あなた
枷なんて私にはないですよ?
両面宿儺
両面宿儺
蜘蛛の糸にからめとられたようにもがいているが?
どういう意味なのかよく分からなかった
(なまえ)
あなた
私は倒れたみたいですけど

みんなどうしてるんだろう?
ふと皆が心配していたのを思い出し思い体を起こし周りを見渡す


骸の上に建つ社


(なまえ)
あなた
(ここにみんないない…)
(なまえ)
あなた
私、帰らないと
両面宿儺
両面宿儺
どこへ?

もうお前の帰るとこはないだろう?



私がいた世界の事を言ってるんだと分かった


胸がズキリと痛む
(なまえ)
あなた
高専に帰ります

野薔薇ちゃんや虎杖くん伏黒くん、先輩たちもいる

あと、五条先生も
最近忙しいのか会えていない背の高い頼もしい先生の姿がよぎる
(なまえ)
あなた
みんな心配していたから
優しい手から身体を離す


頬杖をついて座っている宿儺さんは
両面宿儺
両面宿儺
そこはお前の帰る場所ではない

オマエが1番知っているだろう
(なまえ)
あなた
私はもう帰れない
だから、あそこが今の私の居場所です
みんなの顔を思い出すと心が暖かく感じた
毎日がとても楽しく感じたあの日々が

私の場所となったんだと思う


宿儺さんを見ると


とても冷めた目で私を見ていた
両面宿儺
両面宿儺
オマエは気づいているのに
何も見ようとしない…か

愚かだな

自らの糸に絡まったのにほどかないとはな
冷えた視線を感じる



こわい

だけど皆のとこに帰りたい
(なまえ)
あなた
私が帰れないのは知っています!
宿儺さんごめんなさい

私はもう私の道を歩いています!
冷めた目が怖い


だけどなんでそんな目で見られないといけないの?

だって

宿儺さんが


両面宿儺が
(なまえ)
あなた
あなたが私をここに連れてきた癖に!
両面宿儺!あなたが全部悪いのに!


あなたにそんな目で見られる必要は私には無い!!
私は背を向け走り出した



みんなのとこに帰りたい


あの暖かい日常に

無我夢中で走る私の背に声が聞こえる
両面宿儺
両面宿儺
愚か者が

もがけばいい

苦しめばいい


のたうち回り


痛みを死を絶望を憎しみを怒りを


全てを感じながら


捨てられればいい


耳を塞ぐ


怖い怖い!私を呪う声がする

みんなに会いたい


私は強く願った



みんなのとこに帰りたい



強い光が


暗い世界を照らす


私の帰る場所はあそこなんだ


まっすぐ走り出した






1人残る声はもう聞こえなかった






両面宿儺
両面宿儺
俺はオマエを離さない

それはお前が1番よく知っているはずだ



暗い中で骸の上で頬杖をつく呪いの王は

冷めた目を閉じた

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