伏黒くんに見下ろされている
伏黒くんの足元に照らしている懐中電灯は私が創り出した
私は今から地下に降りるはずだった
地下の牢屋にいる呪霊を殺すために
何故、私はそれを知っているのだろう?
何故かその質問に既視感を感じて違和感を感じた
見下ろしている伏黒くんの目を見返す
何かがおかしい
それだけは分かった
怪しむように眉をひそめて私の名前を呼ぶ
怪しんでいないのかもしれないけど
何故かそう思ってしまった
私は懐中電灯の灯りを消して途中まで降りた階段を登った
なぜと言われても……
怖いのが嫌いな事を思い出した途端に
鳥肌が立った
鳥肌を隠すように自分を抱きしめる
自分が怖くなった
私でない私がいるような気がした
無意識に身震いをした
伏黒くんは困ったような顔をしながら言った
そう言ってかすかに口角をあげた伏黒くん
なんとなく心が暖かくなった気がした
みんながいるから……私は私でいれる?
強くなれる?
既視感を感じる
懐かしく苦しい感情が触れる
確かにと思いクスッと笑う
もう鳥肌は治まっていた
伏黒くんは地下の扉を閉めて玄関へと歩き出した
私もそれに倣って追いかける
何かが変わった気がした
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!