崖の下は鬱蒼とした森だった
草木をかき分けながら前に進む伏黒君の背を同じように草木をかき分けながら追いかける
その背に向けて不安な事を伝える
伏黒君は前を向いたまま
そう言い突き進む伏黒君
本当に祓えるのかな
夢を使う呪術って言うけど実際どうやって倒したらいいんだろう
願ったら良いだけって五条先生はいってたけど
よく分かってないのに
そう思っていると
いつの間にか止まっていた伏黒君の背に頭をぶつけた
私の謝罪は聞こえなかったように小さい声で言う
すっと私にも見えるように伏黒君は身体をずらした
確かに100mほど先に黒い何かが蠢いている
生き物ではない何かに血の気が引いていく
囁き声で私に言ってきてくれるが
自分の心臓と呼吸で聞こえにくかった
そうだ祓わないと
願わないと
どうやって?
黒く蠢いているものと目が合う
それはのそりのそりとこちらへ向かってきた
近づいてくる呪霊は
無数の目ぎょろりぎょろりと動かし
無数の口で尖った声で言葉を発している
シニタイ シンデクルシイ
何かを言っている
聞き取りたくない
その呪霊は大きな巨体だった
黒いヌメヌメとした存在
全ての目が私をみる
全ての口が口々に呪いの言葉を私に伝える
目が目が目が
私を私を
目目目口目目口目
口目口口口目口口
身体が地面から離れる
ドシュッ
おそらく私がいた場所に大きな穴があく
目が追いかける
口が私を食べに来る
どこから伏黒君の声がする
目が私を離さない
追いかけてくる
怖い怖い怖い怖い怖い
恐ろしかった早く逃げたかった
大きな犬が現れる
犬は目へと向かう
無理だ無理だ無理だ
逃れられない
目が私から離れないから
黒い巨体は犬を包むように拡張し覆いこんだ
足を得た目は私を逃さないように走り始める
逃げないと逃げないと!
この腕は誰の?
これのせいで逃げれない
腕から逃れてただ走る
走れているのか分からないけどただ走る
怖い怖い怖い怖い怖い怖い
目が離れない
耳に呪いの声が聞こえる
助けて!!!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。