どのくらい時間が経ったのか。
キスは激しさを増す。
いつのまにか、グクの首に手を回している私がいて。
いつもの自分なら恥ずかしくて、すぐに顔を背けるのに。
そんなのどうでもいいというように。
苦しみから逃れるように。
ただただ、包まれる心地よさと安心感に酔いしれていた。
私とグクの唇が離れ、糸が引く。
酸素が足りないのかさっきよりさらに頭がボーッとした。
グクがそのあとふふって笑うまで、
雰囲気にのまれてグクの胸に抱きしめられていることも気づかなかったくらい。
考えることを放棄していたんだ。
グクはぎゅっと私を抱きしめる。
強く強く。
「愛してるよ」って主張するかのように。
でも、わたしは、空っぽで。
何も考えられなかった。
ジミンオッパの笑顔が。
一つ一つの言葉が。
仕草が。
カメラのデータを一枚一枚消していくときのように。
笑いあった思い出も感動して泣いた思い出も。
そして、苦しくて辛い思い出も。
鮮明に出てきては消えて。
涙と一緒に流れていったようだった。
空っぽで苦しくて。
その空っぽな自分を何かで満たしたくて。
もう、一人は嫌で。
だから、気づいたら返事してた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。