翌日 夜 ICU
ドタドタ
スタッフステーション
遡ること昨夜……
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ICU
ドタドタ
ドタドタ
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翌日 朝
緋山のベッド前
ICUスタッフステーション
(こっそり近付く)
私はいてもたっても居られなかった。
やっと目覚めたのに。
なんでなの?
なんでこの2人が苦しまなきゃいけないの?
名取の今すぐにでも泣きそうな顔。
緋山の困惑した顔。
白石の硬直した顔。
冴島の泣きそうな顔。
藤川の悔しそうな顔。
藍沢の…名取と同じくらい苦しそうな顔。
私はどの顔もみていられなかった。
だって、私も1度、緋山みたいになった事があるから。
結婚直前、記憶を失って。
藍沢を、皆を、沢山苦しめてしまったから。
だからって、今の私に何が出来る?
答えは決まってる。
何も出来ないんだ。
情けない。
スタッフリーダーとして、そして2人の幸せを願う身として…
いつの間にか私は、ヘリポートに来ていた。
辛い時は決まってここに来ていた。
少なからず、救われる気がして。
ここなら、本音を出してもいい気がして。
色々考えている内に
私の頬には一筋の涙か伝っていた。
ヘリポート
耕作が弱ってる…
口では「いい思い出」なんか言ったって、
本当はものすごく辛かったと思う。
だって、結婚するはずの人に突然忘れられて
「誰ですか?」なんて言われるんだもん
平気な方が可笑しいくらい。
切り替えよう、考えたってキリがない。
私がそうなってしまったのも、緋山がそうなったのも、
宿命なのかもしれない。
結婚するための大事な1歩なのかもしれない。
大きく、大事な1歩を、確実に歩んでもらわなくちゃ。
皆が支えてくれたように、今度は私も支えなきゃ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!