第114話

あの日を思い出す
6,430
2020/06/07 11:18
翌日   スタッフステーション  昼
白石恵
白石恵
今日ヘリ要請も受け入れ要請も多いっ!
緋山美帆子
緋山美帆子
マジで多すぎ……
貴方
貴方
午前中だけで6フライト、4受け入れって……
白石恵
白石恵
ヘリ担変わってぇぇぇ……
藤川一男
藤川一男
まぁ……頑張って(笑)
冴島はるか
冴島はるか
余計な事言わない。
藤川一男
藤川一男
はい!
プルルルップルルルッ(ホットライン)
藍沢耕作
藍沢耕作
またか……
貴方
貴方
ホットライン「翔北救命センターです。」
消防
消防
ホットライン「笹生消防より受け入れ要請です。6歳男児、大型トラックと接触し意識不明、出血性ショックの可能性有です。」
貴方
貴方
ホットライン「了解です、受け入れます。」
藤川一男
藤川一男
初療室急ぐか……
初療室
灰谷俊平
灰谷俊平
FFPとアドレナリン10単位お願い。
雪村双葉
雪村双葉
はい。
横峯あかり
横峯あかり
出血性ショックの疑い有かぁ……
名取颯馬
名取颯馬
脳死に繋がるかもな……
横峯あかり
横峯あかり
脳死って私、担当した事無いかも……
灰谷俊平
灰谷俊平
基本シニアの先生達が担当するからね……
貴方
貴方
……脳死、か。
藍沢耕作
藍沢耕作
……可能性あるから脳外にコンサルしといた。
貴方
貴方
……分かった。
白石恵
白石恵
緋山先生、大丈夫?
緋山美帆子
緋山美帆子
え?あ、うん……
貴方
貴方
緋山、外出ててもいいよ……?
緋山美帆子
緋山美帆子
大丈夫。まだ脳死って決まった訳じゃ無いから。
冴島はるか
冴島はるか
白車来ました。
藤川一男
藤川一男
行くか。
藍沢耕作
藍沢耕作
あぁ。
白車受け入れ口
消防
消防
羅白飛斗(ラシロ マイト)くん6歳男児、大型トラックと接触し出血性ショック。3分前に心停止です。
藤川一男
藤川一男
心停止って……
藍沢耕作
藍沢耕作
まだ決まった訳じゃ無い。
藤川一男
藤川一男
……そうだな。
初療室
冴島はるか
冴島はるか
血圧59/26、サチュレーション挿管有で97%ですか……
貴方
貴方
昇圧剤持って来て貰っていい?
冴島はるか
冴島はるか
はい。
藍沢耕作
藍沢耕作
カテーテルで脳動脈見てみよう。
白石恵
白石恵
そうね。
緋山美帆子
緋山美帆子
ごめん、気持ち悪い……
貴方
貴方
藍沢と白石と藤川でカテーテルお願い。
私と冴島で緋山を仮眠室連れて行く。
藤川一男
藤川一男
了解。
横峯あかり
横峯あかり
私達はどうしたらいいんだろう……?
名取颯馬
名取颯馬
さぁ……?
貴方
貴方
フェローはサポート入って。雪村は器具出し。
雪村双葉
雪村双葉
はい。
灰谷俊平
灰谷俊平
分かりました。
仮眠室
貴方
貴方
緋山、大丈夫?
緋山美帆子
緋山美帆子
ほんとごめん……
冴島はるか
冴島はるか
大丈夫ですからゆっくり休んでください。
緋山美帆子
緋山美帆子
……あの日の光景が鮮明に脳裏をよぎったの。
冴島はるか
冴島はるか
まだ脳死って決まった訳じゃ無いですよ、緋山先生は気が早いです(笑)
貴方
貴方
そうだよ〜(笑)
緋山美帆子
緋山美帆子
野上翼くん……今でも覚えてる。
貴方
貴方
……よし!冴島仕事に戻るよ!
冴島はるか
冴島はるか
はい!
緋山美帆子
緋山美帆子
2人共……ありがとう。
貴方
貴方
え〜?どうしたの(笑)
冴島はるか
冴島はるか
気持ち悪くておかしくなったみたいですね(笑)
貴方
貴方
みたいだね(笑)じゃぁね〜!
冴島はるか
冴島はるか
では〜!
(2人が仮眠室を出る)
緋山美帆子
緋山美帆子
……1人にしてくれて、ありがと。
仮眠室前廊下
貴方
貴方
極力接触させないようにシフト調整しとこうかな……
冴島はるか
冴島はるか
それがベストだと思います……
貴方
貴方
私達でも『脳死』って言葉が心を抉るのに緋山は私達以上に抉られてるんだろうね……
冴島はるか
冴島はるか
……シニアしか脳死患者の担当にしないのって、緋山先生の事があるからですよね。
貴方
貴方
……うん。フェローの頃だったから。
冴島はるか
冴島はるか
フェローの間はマニュアルがあってもその通りには出来ないですもんね……
貴方
貴方
フェローだとすぐ情に流されて行動する。
例え頭では分かっていてもね。
冴島はるか
冴島はるか
……何となく、今まで分からなかった空井先生の教育方針について理解出来た気がします。
貴方
貴方
やっぱり?私って結構謎な教育方針してるって思われがちなんだよねぇ(笑)
冴島はるか
冴島はるか
他の人から見れば結構謎ですよ(笑)
貴方
貴方
ま、そう思われても仕方ないんだけどさ!(笑)
冴島はるか
冴島はるか
仕方ないんですね(笑)
貴方
貴方
うん(笑)
冴島side
空井先生は救命の太陽の様な存在。
なんでもポジティブに捉える。
そんな空井先生でさえ、野上翼くんの事を引き摺っている。
緋山先生は尚更引き摺っているはず。
そして心に深い傷を負っているはず。

私達に出来ることは何かあるのか。



幾ら考えたって答えは出ない。


だって心の傷の深さ、痛み、辛さ、苦しさは本人しか分からないから。
心の傷は目に見えない。
治ってるのか、治ってないのかすら分からない。
誰もが「いつか心の傷が分かる日が来ればいいのに。」
そう思っている。
本当に心の傷が分かる日が来るのだろうか。
それは誰にも分からない。
ただ、待つことしか出来ない。
それでいいんだと思う。
無理に声をかけるより、ただ、待つだけでいいと思う。
それだけで、心が軽くなるはずだから。

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