狂ったように暴れ出す彼は、
先生がスマホを返してくれないとわかると……。
物凄い形相で先生を睨み、
教室を出ていく。
クラスがしんと静まり返って、
先生はぎょっとしながらも
黒板のほうへ戻っていく。
しかし──。
教室に戻ってきた男子生徒の手には消火器。
それを大きく振り上げながら、
つかつかと先生に近づき──。
男子生徒は先生の頭を消火器で殴った。
さらには、床に倒れ込んだ
先生に馬乗りになる。
──ドカッ、ドカッ、ドカッ。
容赦なく、
消火器で頭を殴りつける男子生徒。
──ドカッ、ドカッ、ドカッ。
赤黒い血が先生の頭から流れて、
教室の床に血だまりを作っていく。
あまりにショッキングな
光景だったからだろう。
皆、逃げ出すことも、
声をあげることもできずに、
その場から動けないでいた。
──ドカッ、ドカッ、ドカッ、ドカッ!
先生のうめき声が
どんどん小さくなる。
そこで初めて、我に返った。
空気が震えるほどの悲鳴があがり、
一斉に生徒たちが逃げ出す。
早く逃げなきゃいけないのに、
頭がボーっとして、
思考がまともに働かない。
怒りを露にした彼は、
ゆらりと私のほうを見た。
そう思っても、足に力が入らない。
席に座ったまま、動けない……。
男子生徒が私に向かって
歩き出したとき──。
光くんが男子生徒の頬を殴り、
すぐに床に押さえ込む。
優くんが私を立たせ、
教室の外へ引きずるように出る。
教室から出てきた光くんは、
頬を引っかかれたのか、
傷があった。
光くんは、わしゃっと髪を撫でてくる。
先頭に立つ光くんを心強く思いながら、
私たちはその場から駆け出した。
***
あのあと、騒ぎを聞きつけた
他の先生が通報したのだろう。
暴れた男子生徒は
警察に連れていかれた。
そして、殴られた国語教師は、
そのまま帰らぬ人となってしまった……。
私は幼馴染ふたりの部屋にいた。
深刻な空気が漂う中、
3人で顔を突き合わせている。
すると優くんは、
難しい顔で黙り込んだ。
ややあって、静かに口を開く。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。