第26話

26Channel 私に課せられたもの
4,322
2021/09/04 11:00
逢沢 光希
逢沢 光希
優……
光くんは優くんを前にしても、
警戒を解かずに私を背に庇った。

ホウキを構えて、
後ろにじりじりと下がる。
あなた

(優くんは呪いの影響で
狂ってる可能性がある)

いつそのバットで襲われるのか、
ハラハラしながら状況を見守っていると……。
逢沢 優希
逢沢 優希
俺は正気だよ。
それより、中に入れて
優くんは戦意はありませんと
ばかりに両手を上げて、
苦笑いをしていた。

私たちはほっとして、
優くんを中に招き入れる。
あなた

優くん、無事でよかった……

逢沢 優希
逢沢 優希
あなたたちも、
無事でよかったよ
逢沢 光希
逢沢 光希
なんで俺たちの場所が
わかったんだ?
逢沢 優希
逢沢 優希
双子の以心伝心ってやつ?
逢沢 光希
逢沢 光希
冗談言ってる場合か。
説明するのがめんどくさいだけだろ
逢沢 優希
逢沢 優希
はは、バレたか。
それより、はいこれ。
武器は武闘派の光希に
持っててもらったほうが
有効活用できるでしょ
光くんは優くんからバットを受け取る。

ふたりのなにげない会話に、
張っていた気が少しだけ緩んだ気がした。

私たちはまた奥の本棚の裏に隠れて、
作戦会議をすることになった。
逢沢 優希
逢沢 優希
佐伯先輩たちは、
自殺者になにかをして、
呪いを止めたって言ってたよね
あなた

私たちもさっき話してたんだ。
これは誰のための
呪いなんだろうって

私はかいつまんで、
先ほど光くんと話して
いたことを伝えた。
逢沢 優希
逢沢 優希
俺が思うに、キーになるのは、
配信者と自殺者の前島さん、
それから……あなただ
あなた

え、私?

逢沢 優希
逢沢 優希
配信者が知らしめたいのが
『人は欲望や保身のためなら
他者を平気で傷つける』っていう
メッセージだったとする
逢沢 優希
逢沢 優希
それを証明するには、
誰かが自分のために
他者を傷つける必要がある
逢沢 優希
逢沢 優希
でも、それならクラスの
人間が先生や生徒を殺した時点で
証明されてる
逢沢 優希
逢沢 優希
つまり、証明する誰かは、
誰でもいいわけじゃないんだ
逢沢 光希
逢沢 光希
頭がこんがらがってきた。
もっと簡単に言ってくれねぇか?
逢沢 優希
逢沢 優希
ごめんごめん、
なにが言いたいかって言うと、
配信者はあなたにその証明を
させたいんだと思う
あなた

私に『人は欲望や保身の
ためなら他者を平気で傷つける』
ってことを証明させたい?
どうして……

逢沢 優希
逢沢 優希
それはわからないけど、
そこに呪いが始まることを知っていた
前島さんも絡んでるんじゃないかな
逢沢 優希
逢沢 優希
あなた、これまできみが狂わず、
誰かを殺さず、逆に自殺したいという
衝動にも駆られなかったこと
逢沢 優希
逢沢 優希
きみにだけ死のビジョンが見えて、
死を回避できるようになっていること。
そこから推測して、きみが呪いを止める
鍵とは考えられないかな
逢沢 優希
逢沢 優希
これは『見てた人も加害者、
それを広めた人も加害者』ということを
知らしめる呪いなのに
逢沢 優希
逢沢 優希
それを止める者も用意されている。
矛盾しているよね
逢沢 優希
逢沢 優希
この矛盾とあなたの存在から
導き出されるものに……呪いを止める
ヒントがある気がする
あなた

私には呪いを止められる
特権があって、そのために
死のビジョンが与えられたとしたら

あなた

もしかしたら亜子が……
あの日に、私に託してくれたのかも。
その力で、今度こそ誰かを助けてって

あなた

(都合よく考えすぎかな)

でも、そう思えてならない。
逢沢 優希
逢沢 優希
……!
逢沢 優希
逢沢 優希
そうか、これは配信者と
自殺者のゲームなんだよ
逢沢 優希
逢沢 優希
きみの親友は『確かめたかった、
だから証明してみせて』って
言ったんだよね
逢沢 優希
逢沢 優希
これは絆を証明する
ゲームだったんじゃないか?
逢沢 優希
逢沢 優希
命をかけたゲームが始まったとき、
今自分の隣にいる親友や恋人は
味方でいてくれるのか
逢沢 優希
逢沢 優希
そしてあなたが大事な人間を
今度こそ守りきることが
できるのか
逢沢 優希
逢沢 優希
それを確かめるための
ゲームなんだよ
逢沢 優希
逢沢 優希
きみは 自殺者の近しい
人間だったから、
このゲームの証明者に選ばれたんだ

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