興味なさげに光くんは言い、
歩き出す。
私たちもそのあとを追い、
教室に着くと人だかりができていた。
光くんの一声で、
みんながはけていく。
思わずドキッとしてしまったとき、
優くんが私を振り返って、
慌てたように目隠ししようとする。
でも、遅かった。
目の前に広がっていたのは、
スマホの持ち主が血だまりに
沈んでいる……そんな光景だった。
血の気が失せるのを、
自分でも感じた。
くらっとしてふらつくと、
すぐに光くんが抱き留めてくれる。
なにも答えられないでいると、
優くんが私の手を引いて教室から離れる。
近くにいた女子たちに
優くんが声をかける。
彼女たちは実際にその光景を
目の当たりにしたのだろう。
口元を手で押さえながら、
うっと吐き気を堪えているようだった。
私の死のビジョンは
それがいつ起こることなのか、
正確にはわからない。
ふたりにも、自分の力のことは話していない。
いくら幼馴染とはいえ、
こんな非現実的な話、
信じてもらえないと思ったからだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。