意識が朦朧とする中、
そんなふうに思っていると。
桜峰さんから、
死のビジョンが流れ込んできた。
暴徒化した男子生徒に
上履きの紐で首を絞められるビジョンだ。
死のビジョンを見たことを伝えようとするが、
首を絞められているせいで言葉にできない。
必死に逃げてと伝えているときだった。
不意に首の拘束が解け、
酸素が肺に入ってくる。
首を押さえながら振り返ると、
桜峰さんはビジョンで見た通り
上履きの紐で首を絞められていた。
正気じゃない男子生徒の腕にしがみつき、
やめさせようとするが……。
桜峰さんはよだれと鼻水を垂らし、
目を剥きながら、事切れてしまう。
床に座り込んだまま、
疲れ果てて動けないでいると。
目が血走ったクラスメイトは、
次は私とばかりに、馬乗りになってくる。
ニタリと笑うクラスメイトに、
総毛立った。
そう言って私の服に手をかけると、
無理やり脱がそうとしてくる。
鎖骨の辺りを爪で
強くひっかかれた。
ふたりのことを思い出したら、
目に涙が滲んだ。
私が諦めたように目をつぶった。
そのとき──。
ふたりの姿を目にした瞬間、
ぶわっと目から涙がこぼれた。
光くんはすぐにこちらに走ってきて、
その勢いで私に馬乗りになっていた
男子を殴りつけた。
優くんが私を起き上がらせてくれている横で、
今度は光くんが私を襲った男子の上に跨る。
──ボコッ、ドカッ、ドカッ。
光くんは、何度も何度も男子の顔を殴った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!