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第1話

1Channel 雨の悲劇

あの日は、恐ろしいほど優しく、
しとしとと雨が降っていた。
あなた

なんで……っ、なんで……っ

傘もささず、泥が跳ねようとも、
ただひたすらに走る。
あなた

なんでなの、亜子あこ──

数十分前、私のスマホに届いたメッセージ。

【ごめんね、もう頑張れないや】

前島まえじま亜子は私の親友。
クラスではイジメのターゲットにされていた。

理由は確か、クラスの中心にいる
女子──桜峰さくらみねさんと好きな人が被ったから。

桜峰さんのグループの女子たちが
亜子を無視するようになって、
次第にイジメはエスカレート。

SNSで亜子の名前を勝手に使ったり、
出会い系サイトに登録したり、
そのやりとりをネットで拡散したり……。

そんなの嘘に決まってるのに、
瞬く間に噂は広がって、
亜子は学校に来なくなった。
あなた

はあっ、はあっ、
私の、せいだ……っ

あなた

(高校に入って、初めてできた
親友だったのに)

イジメられていた亜子に私ができたのは、
桜峰さんたちのいない場所で
話を聞いてあげることくらい。

表立って庇えなかったのは、
私も亜子みたいに
イジメの標的にされると思ったから。
あなた

(私はずるい……)

あなた

(桜峰さんたちにイジメられたくない。
亜子にも嫌われたくない。
だから、陰で亜子を助けて……)

あなた

(私は卑怯者だ──)

あなた

はあっ、はっ、
亜子を見つけなきゃっ

あなた

(あのメッセージ、
亜子はもうすべてを
終わらせるつもりなんだ)

あなた

(私、まだ亜子に謝ってない。
もしまだ間に合うなら、
今度は堂々と亜子を守るからっ)

あなた

だから、ひとりで逝かないで、
亜子っ──

***
あなた

亜子!

亜子を捜し回って、ようやく見つけた。
亜子は学校の屋上の
フェンスの向こうに立っていた。
あなた

亜子……なに、してるの?

そんなふうに尋ねながら、
頭の端では理解していた。
あなた

(亜子は、飛び降りるつもりなんだ……)

あなた

あ、危ないよ。
どうやってそっちに行ったの?
フェンス、こんなに高いのに……

あなた

(違う、言いたいのは
こんなことじゃない)

亜子は儚げな笑みをたたえたまま、
頭上を悠々と超える高さの
フェンスを見上げる。
前島 亜子
前島 亜子
……フェンスの一か所にね、
抜け穴があるんだよ、ここ。
私、よく授業サボって
屋上に来てたから、知ってるんだ
あなた

そ、そうなんだ……。
でも、雨降ってるし、滑って落ちたら
危ないから、こっちに戻ってきて!

前島 亜子
前島 亜子
…………
でも、亜子は笑顔で
私を見つめたまま動かない。
あなた

亜子、お願いだから……

前島 亜子
前島 亜子
あなた、ごめんね。
私……確かめたかったの
あなた

……え……?

前島 亜子
前島 亜子
だからお願い、証明してみせて
あなた

亜子、さっきから亜子が
なにを言いたいのか、
全然わからないよ!

亜子はやっぱりなにも話してくれない。

亜子は両腕を広げた。

ぐらりと、その身体が後ろへ傾く。
あなた

待って……待って、
逝かないで、亜子!

慌ててフェンスに駆け寄るけれど、
亜子の姿が目の前から消える。
あなた

亜子っ、嫌ああああああっ

どさりと、嫌な音がした。

ガシャンッとフェンスにしがみつき、
私は絶叫する。
あなた

私のせいだっ、自分が可愛くて、
標的になりたくなくて、
私は苦しんでる亜子に
気づかないふりをしたっ

あなた

だから亜子は……っ、
私が死なせたんだ……っ

どれだけの雨が私の涙を洗い流しても、
この黒く染みついた後悔だけは、
消えることはなかった。

***

あれから、1ヶ月後──……。