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第30話

30Channel 自殺者と配信者の追憶
【side亜子】

私は屋上で自殺したはずだった。
なのに、目が覚めると……。
前島 亜子
前島 亜子
どうして、まだここにいるの?
私は飛び降りたはずの屋上にいる。
すると手に持っていたスマホが光った。
前島 亜子
前島 亜子
……?
画面を見ると、【加害者同盟】という
配信者の動画が勝手に流れている。
前島 亜子
前島 亜子
これって、最近噂になってた……
配信者
配信者
俺のことを知ってるのか
前島 亜子
前島 亜子
え?
声がしたほうを振り返ると、
フェンス越しに男が現れた。
配信者
配信者
お前は数分前に自殺した。
どうだ、復讐したくないか?
前島 亜子
前島 亜子
誰に?
配信者
配信者
お前を自殺に追い込んだ人間に
前島 亜子
前島 亜子
思わない。
誰とも関わりたくないの。
私はもう、なにもかも終わりに
したくて飛び降りたんだから
配信者
配信者
まあ、お前が望む
望まないに関わらず、
お前が自殺したことで、
呪いは始まってしまったが
前島 亜子
前島 亜子
呪い?
配信者
配信者
俺は『イジメを見てただけの
人間も加害者』だと思っている
配信者
配信者
だから、思い知らせてやるんだ。
人を蹴落としてまで守ろうとする
居場所、人間関係がどれほど脆くて
無価値なのかを
配信者
配信者
その動画は呪いの動画。
負の感情がある者は見れば
死にたくなり、破壊欲、性欲……
配信者
配信者
本来は理性で抑えられている
欲を叶えたくて仕方なくなる
配信者
配信者
無意識のうちに動画を広めた
人間も加害者になる
配信者
配信者
自分の何気ない行動が誰かを
傷つけているのだということを
知らしめたい。お前はどうだ?
前島 亜子
前島 亜子
イジメに誰が善で悪なんてない。
あれは呪いで、病みたいなもので、
人がいるところには発生するもの
前島 亜子
前島 亜子
でも、その病にかかりながらも、
人を助けようとする強い人もいる
配信者
配信者
それはお前の親友のことか?
あれは陰でお前を助けてただけで、
結局は傍観者だった。同罪だ
前島 亜子
前島 亜子
あなたはちゃんと
手を差し伸べてくれた
配信者
配信者
なら、ゲームをしないか
配信者
配信者
死のサバイバルが起きたとき、
自分の隣にいる親友や恋人は
味方でいてくれるのか、
それを確かめるためのゲームだ
配信者
配信者
その中で、お前の親友が
大事な者のために動ければ
お前の勝ちだ
前島 亜子
前島 亜子
それじゃあ、私の勝ちだよ。
あなたなら助ける
前島 亜子
前島 亜子
(あなた、ごめんね)
前島 亜子
前島 亜子
(私が死んだことで、これから
恐ろしいゲームが
始まってしまうみたい)
前島 亜子
前島 亜子
(配信者が何者かは知らないけど、
たぶん……私と同じで生きることに
絶望した存在なんだと思う)
前島 亜子
前島 亜子
ねえ、あなただけ呪いの
動画っていう武器を使うのは
フェアじゃないと思うの
配信者
配信者
ほう
前島 亜子
前島 亜子
あなたにだけ、
次に死ぬ人間が誰か、
わかるようにしてくれない?
前島 亜子
前島 亜子
そうすればあなたは、
あなたが誰かのために行動できるのか、
たくさん見届けることができるはず
配信者
配信者
それもそうだな。
いいだろう
前島 亜子
前島 亜子
あと、このスマホ使える?
持っていたスマホを持ち上げると、
配信者の男は首を縦に振る。

私はスマホで【ごめんね、もう頑張れないや】と
意味深なメッセージを打ち、あなたに送った。

数分前に死んでいる私が、
再び会いたいと思った人間は、
親友のあなただった。

あなたは私が死んだことで、
すごく胸を痛めるだろうから、
心配だったのかもしれない。

しばらくして、息を切らしながら
あなたが屋上にやってきた。

フェンスの向こうに立つ私を見て、
今にも泣きそうな顔をしている。
前島 亜子
前島 亜子
あなた、ごめんね
あなた

……え……?

前島 亜子
前島 亜子
(これから怖い思いを
させちゃうと思う。
それに、親友の死という
重荷を背負わせてしまう……)
前島 亜子
前島 亜子
私……確かめたかったの
前島 亜子
前島 亜子
(あなたなら必ず、どんなときでも、
自分よりも他人のために動けるって)
前島 亜子
前島 亜子
(あなたはきっと……。
自分のせいで私が死んだと思って、
本当は誰よりも優しいってことを
忘れてしまうと思うから)
前島 亜子
前島 亜子
だからお願い、
証明してみせて
前島 亜子
前島 亜子
(私の死に負けない、
強いあなたになって。
それでゲームに勝って、
絶対に生き残って)
あなた

亜子、さっきから亜子が
なにを言いたいのか、
全然わからないよ!

私は両腕を広げ、後ろに倒れた。

親友の悲鳴を聞き、落下していると、
配信者の声が響く。
配信者
配信者
お前が勝ったら、
願いを叶えてやる
前島 亜子
前島 亜子
じゃあ、あなたが万が一、
命を落としたそのときは、
必ず助けて
配信者
配信者
お前自身が生き返りたい……と、
願わなくていいのか?
前島 亜子
前島 亜子
私は生きることを諦めてしまった。
配信者さん、あなたも同じでしょう?
配信者
配信者
…………
配信者はなにも言わなかったが、
沈黙は肯定ととれる。
前島 亜子
前島 亜子
(疲れ果ててしまった私には、
もう生への執着はない)
前島 亜子
前島 亜子
(だけど、あなただけは……。
私も守りたいんだよ)
ぐしゃりと地面に叩きつけられるのは、
二度目。

これが配信者と自殺者である私の、
ゲームの始まりだった。

(追憶END)