第23話
止めないと……
(きっかけは多分、私だ。
私のために、光くんは怒って……)
今度は俺が止める番だ
私も手伝うよ
頼むよ。
俺が光の動きを封じるから、
その間に呼びかけて
私が頷くのを見届けて、
優くんは忍び足で光くんの背後に回った。
そして機を見て、
光くんを羽交い締めにする。
くそっ、離せ!
う、……ぐっ、
痛いっ、痛い……
光くんに殴られていたクラスメイトは、
よろよろとおぼつかない足取りで逃げていく。
この場にいた生徒たちは、
みんな逃げていったのだろう。
いつの間にか体育館には、
物言わぬ死体と私たちの3人だけになっていた。
離せよ!
あいつが逃げていくだろ!
お前に人殺しを
させないためだよ!
あなた、今だ!
うん!
私はゆっくりと、光くんに歩み寄る。
(光くんは私を大切に
思ってくれてたから、
傷つけられて、
怒りが膨れ上がったんだ)
悲しい、こんなの……。
大切に思う気持ちすら、
狂気に変わってしまうんだから
俺はあなたを
殺そうとしたやつを殺す!
早く離せ!
殺すと繰り返して、
暴れている光くんの前に立つ。
俺が助けてやらないと、
あなたが死んじまう!
私はもう大丈夫だよ。
光くんが助けてくれたから。
大切に思ってくれてありがとう
私は光くんの手を取って、
自分の胸に誘う。
無事をわからせるように、
私の心臓の辺りを触らせた。
感じるでしょ、私の鼓動
…………
光くんの瞳に、
少しずつ正気が戻って
くるのがわかった。
俺……本気であいつを
殺そうとしてた
うん
自分が自分じゃなくなる
みたいで……怖ぇ
光くんは力なくその場に蹲る。
今の光くんから、
狂気は感じられなかった。
もしひとりぼっちだったら、
私も……誰であっても、
狂ってしまったかもしれない
でも、私にはふたりがいた。
心細いとき、思い出すのは
ふたりのことだったよ
ふたりの存在が
私を繋ぎとめていてくれるんだ。
だから……
私は光くんの手をぎゅっと握る。
自分が自分じゃ
なくなくなっちゃいそうな
ときほど、そばにいよう
……っ、ああ
縋るように見上げてくる光くんを、
私は抱きしめた。
光くんもまた、
私の背に腕を回して、
強く強く抱きしめ返してくれた。
***
光くんが落ち着いた頃……。
あなた、おじさんとおばさんは
無事だよ
本当に!? よかった……
でも、睡眠薬が抜けなくて、
まだ意識が朦朧としてると思う
警察と救急車を呼んでおいたから、
すぐに病院に運ばれるはずだよ
ふたりは平気?
病院に行かなくて
よかったの?
なに言ってんだよ。
お前が攫われたっていうのに、
病院のベッドで寝てられねえ
ふたりとも……。
うん、ありがとう
これからのことだけど、
まずは暴徒化した生徒たちを
見つけよう
そうだね。暴徒化した生徒を
ほっておいたら、
誰かを襲うかもしれないし
そうと決まれば、昇降口に急ごう。
外に出るなら、
そこを通るはずだから
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