初めて会ったその日から手紙の量は増えて、
印象は「病室の女の子」から「普通の女の子」
に変わっていた。
手紙のやりとりをするうちに色々なことを
教えてくれた。
19歳、高校へは通っていたけど3年生で
出席日数が足りなくて今高卒認定試験を
受けていること。
よくなったら大学に通いたいこと。
僕の動画を見て笑っていると親が喜んで
くれてグッズを買ってくれたこと。
彼女病気は心房中隔欠損症という病気だと
言うこと。
手術で治るし日本でも出来るけどカテーテル
治療のできない位置だった為切開しか方法が
なかったことと、
再生不良性貧血という難病指定されている
血液中の白血球、赤血球、血小板のすべてが
減少する疾患もステージ2の為手術が延期。
再生不良性貧血の方は3ヶ月ほど薬を飲み
続けていたら数値が安定したので、
数ヶ月以内には手術するとのことで不安になり
この機会に伝えたいからと僕にファンレター
を送ってくれたこと。
元々喘息気味で学校も休みがちだった為、
友人もほとんど居なかったから僕の動画と手紙が
救いだったということ。
たった数ヶ月で僕にここまで教えてくれた。
いつのまにか、はじめくん、あなたって呼び合ってた。
手紙が増えるごとに、あなたについて考える時間も増えた。
やり取りをする中でラインも交換したのに2人して手紙を送り合ってた。
パパが少しだけ照れくさそうに可愛いレターセットをプレゼントしてくれたんだ。パパにはライン交換したの秘密だよ!
ママはだいちぃが好きなんだって、でも畑のみんなすごいニコニコしてくれて可愛かったって言ってたよ。
私の担当の看護師さんはね、東海オンエアが好きなんだって。その看護師さん、すごく綺麗で優しい人だからどんなグループかと思って見てみたらイメージと違って変なことしてるグループだった!
病室の中で起こった小さな出来事。
楽しそうに書いていると思うと一文字一文字が愛おしく感じた。
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LINE
[あなた:おはよう]
朝に来るLINE、決まって同じ時間。
検温だから起こされるんだって。
たまに絵文字がつくだけで嬉しくて、
でもLINEだと少し素っ気なかった。
[はじめ:なんでLINEだとそっけないの?]
[あなた:手紙だと考える時間はたくさんあるけど、LINEだと早く返信しなきゃ行けない気がして。]
既読がついてから数時間後のLINE。
これだけ仲良くなっても簡単な返信も考えてくれてるのか。
[はじめ:いーよ!手紙は1日一通とかだし寂しくない?あんま考えないでくれー!]
すぐに鳴るLINEの音。
[あなた:寂しい。嬉しい。]
考えないとこうなるんだ。思わず笑った。
次はいつ会えるかな。ぎっしり詰まったスケジュールを見てため息をついた。
あなたもあいたいと思ってくれてるといいな。
好きだなんてまだ伝えてはいけない気がして、
「今日も月は綺麗で、明日も晴れる気がする。」
そう書いた。
同じ空を見ていると思うと中途半端に欠けた月
すらも綺麗に見えた。
明日も晴れて病室に光が差し込みますように。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。