第9話

始まるなら、それは。〜闇と君の声C2.2
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2018/11/23 18:14
ひた、ひた、ひた

足音、が聞こえてくる……

だれ、の……?


私は振り向いた。
暗闇。


暗闇が、そこにあって。
何も、見えない。



そっと。誰かが私の手を掴んだ。
それは、暗闇の恐怖を和らげるような温もりを宿していて。

私は訳も分からないままその手を掴んでいる。




ゆらり、目の前に仄かに鬼火見たいに橙色の光の球が揺れた。

ぬらぁ



「…………!」


顔が、溶けているーーー

いや、辺りが暗いからなの?
顔面がまるで陥没してるみたいに。頭の上とおでこと顎はあるのに。
その顔の中心や表情は見えなくて。




「馬鹿」

突然。握られていた左手をぐい、と引かれる。

「そっちを見ちゃ、ダメだ」


強い力で引かれる。手を引っ張られて。

「お前も喰われるぞ」




「ーーーっ!?」

最後の一言で、眼が覚めた。。。

「はぁ、はぁ、はぁ………」


嫌なユメ。

びっしょり。冷や汗をかいてた。



少しだけ震えながら脇に置いてある充電ケーブルが刺さったままのケータイを手に取る。

時刻は午前3時33分……

ゾロ目。うん……関係ないよね?



乱れた息を整えつつ、もう一度かけ布団をかぶる。

“お前も喰われるぞ”


何?何かのホラー映画じゃあるまいし。

「………やだな」

ぽつり。と呟いても。夜の帳が降りた部屋はまだ暗いまま。

ぱち。
枕元のスタンドに手を伸ばしたところで。

夢の中で最後に私に声をかけたひと、の声が聞き覚えがある声なのを思い出した。

「……あのひとだ」

“嘘☆直ぐそこで落ちてた”


昨日の放課後。無くしたケータイを拾ってくれた、ちょっと格好良い上級生?みたいなひと。

「うん……」

声があのひと。特徴的だったからかな。
気だるくて少しだけ甘みのある不思議な声。甘いけど少し低くて、力強さはあって。

(一度会っただけなのに、夢に見るとか……どんだけ)

そんなこと思いつつ。

「それにしても、“喰われる”って……」


変なの。
怖すぎだし。

夢占いでも検索して心を沈めようかとかーーそんなことを考えている内に、また再び眠りの世界へと私は堕ちていったー……

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