その日の晩。
ベッドに寝転がって。
ぽちぽちとケータイを眺めてた。
“閲覧用”に作ったSNSのアカウント。
専ら趣味のことや好きなことの情報とかを見るためだけにこっそり作った。
クラスでも、バリバリSNSやったりブログ書いてる子もいるけど……引っ込み思案な私は、“表向き”に自分のことを発信するのはどうにも苦手だった。
と言ってもお付き合いはあるから。“閲覧用”のアカウントとは別に“知り合いと繋がる用”のアカウントを作ってもいて。そっちでは知り合いとかクラスの時々話す程度の子とか何人かと繋がってる。専らそっちもほぼ呟いてはいないんだけど。
“閲覧用”のアカウントでタイムラインを眺める。
上から下へ。
次から次へと流れる情報ーー
「?」
メンション……。
ぽわり、と通知が浮かぶ。誰だろう?
知らないひと。
スパムかな……と思いながらその通知の先にある言葉を読むーー
はい…?突然飛んできた私宛のリプライの成り行きが飲み込めず、?マークを大量に浮かべたままその字面を追う。
ちなみにnana0920ってのはこのアカウントの私のID。
うん?新手のなんていうんだろう。出会いを求めてる人なのかな……そんなことを思いつつ。
社交辞令。
っていうか、どこから私を見付けたんだろうこの人……
こんな私に興味を持ってくれてる妙な嬉しさ?と。
変な人だと分かったら即効ブロックしようーーなんていう2つの気持ちが錯綜して。
私は少しだけ空いたカーテンの隙間から見える夜空をぼんやり眺めながら。
そのまま。眠りに落ちていった。
そして、夢を見た。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!