Chapter2-x
「うん。上出来だよ」
湿っぽくて、埃っぽい…… 何処かのとある雑居ビルの一室。
艶やかで、でも若い。
少年の声……
「威勢が良いのもキライじゃないけど、嘘つきさんはどうかな」
仄かに見えるのは、蝋燭の焔……
「“敵を欺く為の嘘”ならいいね」
会話の先の相手の声は、聞こえない。
ただ、何処と無くカビ臭さを感じる様な古い建物の臭いだけが辺りに漂っている。
「ああ…獲物?もう目星はついてる、おーけー。抜かりなく、ね」
そして、薄い煙の筋が揺れるー…香、の薫りが薄汚い湿気を帯びた空間の中に奇妙な艶やかさをもたらして。
「夜が待ち遠しい………」
蝋燭の灯りに揺られながら、少年は口許の両端をそっと、持ち上げたーー…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。