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2021/11/02

第45話

第44話「決意」
夏目 海成
夏目 海成
それじゃあ、俺、帰るけど
 玄関先で靴を履いた夏目さんが振り返る。けれど「帰るけど」に続く言葉は出てこない。
小田原 キララ
小田原 キララ
(ねえ、先生)
小田原 キララ
小田原 キララ
(その間は、なに?)
夏目 海成
夏目 海成
困った時は、いつでも相談して?
夏目 海成
夏目 海成
これでも一応、教師だからさ
 夏目さんが困り顔で微笑み、自分の頭を撫でた。さっき、あたしの髪に触れた、その手で。
小田原 キララ
小田原 キララ
ありがとうございます
小田原 キララ
小田原 キララ
……困った時は
小田原 キララ
小田原 キララ
連絡します
小田原 キララ
小田原 キララ
(あ、これって……)
小田原 キララ
小田原 キララ
(困った時以外は、連絡しちゃダメってことかな?)
 自分から遠ざけたのに。
夏目 海成
夏目 海成
それじゃあ、おやすみ
 自分から帰りをうながしたのに。
小田原 キララ
小田原 キララ
(待って……)
 去っていくその背に、追いすがりたい自分がいる。
 どこにも行かないでほしい。

 あたしを1人にしないでほしい。
小田原 キララ
小田原 キララ
あたしを1人にしないで……
 揺らぎ始めた我慢の栓は、感情の熱に突き動かされ、あたしの口をついて出る。

 思いの丈と共に。
夏目 海成
夏目 海成
小田原……?
小田原 キララ
小田原 キララ
(……引いたよね?)
小田原 キララ
小田原 キララ
(困るよね?)
 ただの生徒に、こんなこと言われて。自分でも、嫌になる。こんな自分、大っ嫌い……。
夏目 海成
夏目 海成
大丈夫だよ
小田原 キララ
小田原 キララ
え……?
 頭にふわりと大きくて暖かい手が乗せられる。じんわりと伝わる熱が、あたしの高ぶった感情を解きほぐした。

 夏目さんは、小さな子どもを寝かしつけるように、優しい声音で言う。
夏目 海成
夏目 海成
お父さんは、ちゃんと帰ってくるから。それまでは、頑張ろうな?
小田原 キララ
小田原 キララ
……
小田原 キララ
小田原 キララ
はい……
 そのたった2文字のその言葉を呟くのが精一杯だった。頷くと同時に、涙の粒がこぼれ落ちる。
夏目 海成
夏目 海成
本当に、大丈夫?
夏目 海成
夏目 海成
誰かに来てもらおうか?
 夏目さんの言葉に、ふるふると首を横に振る。

 違うのに。今、寂しいのは、1人だからじゃなくて。

 ただ一言、あなたが好きだと伝えることすら出来ない、あたしと夏目さんの距離。
小田原 キララ
小田原 キララ
本当に、大丈夫です
小田原 キララ
小田原 キララ
あたし……
小田原 キララ
小田原 キララ
(笑わないと)
小田原 キララ
小田原 キララ
こんな風に1人で過ごすの、初めてで……
小田原 キララ
小田原 キララ
(だって、あたしは……)
小田原 キララ
小田原 キララ
『寂しい』なんて、思っちゃいました
小田原 キララ
小田原 キララ
(エミリージョーンズの、娘なんだから……!)
小田原 キララ
小田原 キララ
困らせてばかりで、ごめんなさい
小田原 キララ
小田原 キララ
あとで父に電話します
 あたしがニッコリと笑顔を作って見せると、夏目さんはホッとしたように微笑んだ。
夏目 海成
夏目 海成
そうした方がいい。お父さんもきっと、安心するだろうし
夏目 海成
夏目 海成
俺も、安心できるよ
 夏目さんの優しい言葉に。暖かい眼差しに。緊張の糸が解けていく。
小田原 キララ
小田原 キララ
ありがとうございます
夏目 海成
夏目 海成
じゃあ、今度こそ。おやすみ
小田原 キララ
小田原 キララ
おやすみなさい
小田原 キララ
小田原 キララ
夏目先生
 今度は自然に笑みがもれた。
 夏目さんが玄関から外に出てから、鍵をかける。金属の擦れるガチャリという音を合図に、夏目さんの足音が聞こえた。

 続いて、隣の扉が開いて閉まる音。ああ、夏目さんは本当に自分の家に帰ってしまったんだ。そう思ったら、不意に寂しさが込みあがる。
小田原 キララ
小田原 キララ
(泣いちゃダメ……!)
小田原 キララ
小田原 キララ
(あたし……)
小田原 キララ
小田原 キララ
(強く、なりたい)
 いつか夏目さんとの関係が今とは違うものになった時。

 たとえば、先生と生徒でなくなった時。あなたが好きですと言えるような強さが欲しい。

 1人でも大丈夫と胸を張れる、強さが。

 だってあたしはもう、1人じゃないんだから。