第51話

第50話「あたしの味方」
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2021/12/14 11:00
小田原 キララ
小田原 キララ
(よかった……)
小田原 キララ
小田原 キララ
(千春ちゃんと仲直りできて)
桜木 千春
桜木 千春
そういえば、キララちゃん
桜木 千春
桜木 千春
部活は、どうするの?
小田原 キララ
小田原 キララ
部活……?
小田原 キララ
小田原 キララ
(そうだ。家庭科部に入ろうと思ってたのに)
小田原 キララ
小田原 キララ
ごめん、忘れてた!
 色んなことがありすぎて、すっかり忘れていた。お父さんのためにも、部活でお菓子作りをしようと決めていたのに。

 あたしは千春ちゃんに向かって手を合わせ頭を下げた。千春ちゃんはクスクス笑って言った。
桜木 千春
桜木 千春
いいよ、気にしないで
桜木 千春
桜木 千春
家庭科部なら、私の友達が所属してるし
桜木 千春
桜木 千春
放課後に、見学させてもらう?
小田原 キララ
小田原 キララ
うーん……
小田原 キララ
小田原 キララ
(見学は、したいけど)
小田原 キララ
小田原 キララ
(お父さんには、ちゃんと報告しておきたいな)
小田原 キララ
小田原 キララ
ごめん
小田原 キララ
小田原 キララ
うちのお父さん、今、出かけてて……
小田原 キララ
小田原 キララ
帰ってからで、いいかな?
小田原 キララ
小田原 キララ
相談も、しておきたいし
 部活動で下校時刻が遅くなれば、夕食の支度も当然、遅くなる。他の家事もあるし、お父さんへの報告は必要だ。

 できれば電話ではなく、会って話をしたい。
桜木 千春
桜木 千春
そっか
桜木 千春
桜木 千春
キララちゃんのお父さんって、今どこにいるの?
小田原 キララ
小田原 キララ
えっ! 今!?
小田原 キララ
小田原 キララ
(ど、どうしよう)
 千春ちゃんに隠しごとはしたくない。それに、須藤くんが言うように千春ちゃんが喜んでくれるのなら、話しておきたい。
小田原 キララ
小田原 キララ
(だけど……)
 不安がチクリと胸をさす。
小田原 キララ
小田原 キララ
(もしも)
小田原 キララ
小田原 キララ
(期待に、こたえられなかった?)
 考えることすら、拒みたくなる。

 もしも。

 母が、あたしに会いにこなかったら?

 日本に来ることを拒否したら?

 そもそも、あたしに会う気なんてなかったら?

 あたしはそれでも、前を向いて歩けるんだろうか……。
桜木 千春
桜木 千春
ごめんね!
桜木 千春
桜木 千春
言いたくないなら、いいよ
小田原 キララ
小田原 キララ
違うの
小田原 キララ
小田原 キララ
そういう訳じゃなくて……
 そういう訳じゃないなら、どういう訳だろう。説明できない。自分のことなのに……。
桜木 千春
桜木 千春
でもさ
 千春ちゃんが話題を変えるために、明るい声音で言う。
桜木 千春
桜木 千春
一応、報告しておいた方が良いと思うよ
桜木 千春
桜木 千春
先生には
小田原 キララ
小田原 キララ
(先生には、報告しておくべきか……)
 あの後、千春ちゃんは吹奏楽部の練習のために、部室へ向かっていった。あたしが見学するつもりなら、部活は休もうと思っていたらしい。

(あたしのために、そこまで……)

 千春ちゃんの人の良さに、鼻の奥がツンと痛くなった。大丈夫。たとえ母が会いにきてくれなくても、あたしはがんばれる。だってあたしには、心強い友達味方がいるんだから。
小田原 キララ
小田原 キララ
(本当に、よかった)
小田原 キララ
小田原 キララ
(この学校にきて……)
 職員室の前で、歩みを止める。そしてもう一つ、この学校に来てよかったと思える理由に、会いに行く。
小田原 キララ
小田原 キララ
(生徒と先生だから、なんて)
小田原 キララ
小田原 キララ
(自分で、言ったのに……)
 夏目さんに会えるかもと思ったら、胸がドキドキする。

 口の中は、苦くて甘いコーヒーの味。頭には、優しく触れられた感触。それぞれの思い出がよみがえった。

 そして夏目さんと、母エミリージョーンズの想いを聞いた日のこと。

 そのどれもが、かけがいもないほど愛おしい。
小田原 キララ
小田原 キララ
(でも、夏目先生は副担任だし)
小田原 キララ
小田原 キララ
(報告するなら、担任の黒岩先生がいいのかな?)
 そんなことを考えながら、職員室の扉に手をかけた。

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