第9話

記憶の扉が開く
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2018/03/22 15:39
「な、美桜!何だよその服!」

「仕方ないでしょ。頼まれたんだから」


そんな似合ってないかな…

秀にそう言われると何故かヘコむ。


「まったく…美桜と賀川は倉庫から荷物取ってきて!」

痺れを切らしたかのように綾ちゃんはそう言う。


「美桜、あんたも仕事ばっかじゃなくて楽しんできな。賀川と回らせるのは癪だけど」

「い、いいのか?」


秀もびっくりした顔を向けている。

すると「ほら!さっさと行く!」綾ちゃんに教室を追い出されました。


「綾ちゃんって優しいんだけど不器用なとこあるんだよね」

「俺もそれは薄々感じてた」


他愛ない話。

だけど秀と話せる。ただそれだけが嬉しくて仕方なかった。


だったら…思い出さなきゃよかった…


「ないね…」

「俺、あっち探してくる」


倉庫で頼まれた物を探しに来た私たち。

だけどなかなか見つからない。

それに物の置き方、雑だな… これじゃ誰か怪我してもおかしく…


「きゃ!」


私は何かにつまづく。


「痛っ…」

「美桜!あぶなっ…!」


金属の棒が私の方に向かって落ちてくる。

あぁ…ダメだ… 痛みに備え目を瞑るけど
一向に痛みは来ない。


「秀!?」

それもそのはず。
秀が私のことを庇ったから。


あれ…これに似た経験、以前したことが…


すると同時に蘇る記憶。

私の心を痛いくらいに傷つけて、だけど大好きで大切で失いたくなかった…


──私の記憶


それと同時に溢れる想い。


──それでもやっぱり…秀が好き。


「大丈夫だ。かすり傷。それより美桜には怪我ないか?」

「うん…」

「やっとお前のこと守れた」


ずるいよそんな顔…

そんな顔されたら私…


また、どうしようもなく秀のこと


「好きになっちゃうじゃん…」

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