次に目を開けると病院にいた。
頭に包帯が巻かれていた。
よこには私の手を握りながら寝て居るユトの姿
ユトの頭を撫でる。
私は死んでなかったんだ。
よかった…まだユトと_
【チリンチリン】
鈴の音が鳴る。
私とユトのいる病室に鳴り響く
やだ。
やだ。
まだ一緒に居たい。
いつのまにか開いた窓に黒猫が立つ。
それに気づいた瞬間_
【グサッ】
鋭い音が鳴り響く。
ああ。血を吐いて倒れる。
ユトは…ユトだけは守りたい
だから願うんだ。
ただ願うだけ。
ナースコールボタンを押しながら。
ユトを守る。
刺された腹部からの出血で
ユトの顔に血が付く。
私を刺した人はナースコールに
怯えて逃げていった。
だんだんと薄れゆく意識の中、
ただズキズキと痛む頭と
感覚のなくなってゆく腹部に
身を委ねて目を瞑る
苦しい悲しい…さようなら…
【最後に少女は笑った】
【大切な人を守れた喜びに溢れて居たから】
【刺死】
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。