チクタクと音を奏でながら、リズムよく時を刻む掛け時計を見つめる。
先日の保健室でのやり取りや、蒼真とのいろんなことを思い出しているうちに、変に目が冴えて寝付けなくなってしまった私は、もう何度目か分からないため息を零した。
22時には布団に入っていたのに、もう時計の針は23時45分を差している。
明日も学校だって言うのに……全然眠れない。
独り言を零しながらベッドから起き上がった私は、月明かりだけが照らす薄暗い部屋を出て、廊下の電気を付けると、突然の明るさにチカチカする目を擦りながらキッチンへと向かった。
〜キッチン〜
いつもティータイムになると、メイド見習いの春香ちゃんが私の好みに合わせて美味しい紅茶やココア、ホットミルクなんかをいれてくれる。
おかげで自分でいれたことは数えるくらいしかなくて……。
正直、不安しかない。
なんて、自分に言い聞かせて薄暗いキッチンの明かりを付けようとした私は
突然、キッチンの暗闇の向こう側から声が聞こえて肩がビクッと揺れた。
フッ、と優しく笑って「昔はよく一緒に寝ましたよね」なんて言う蒼真に、じんわり嬉しさが込み上げてくる。
小さい頃は蒼真とくっついて寝るのが好きだったっけ。
温かくて、心地よくて……安心してぐっすり眠れるんだよね。
私をからかって遊ぶなんて、意地悪にも程がある!
私が蒼真を好きってことも知ってるくせに。
……ん?待てよ。
今、冗談ばっかり言う私に仕返しって言ったけど。なんのこと?
いつもスルーされてばっかりで、ちゃんと返事をもらえたことがないし……。
もしかして「好き」って気持ちが冗談だと思われてる?だとしたら【好き好き大作戦】失敗なんですけど!?
もう!この恋、前途多難すぎる!!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!