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第10話

第10話 突然のキス
7,414
2019/12/21 04:09
如月さんとのデートは、本当に楽しくて。

さり気ない気遣いができて、何をさせてもスマートで、優しくて、笑顔を絶やさない如月さん。

常に私を楽しませようとしてくれて、色んな話を聞かせてくれた。


だけど───。
確かに楽しかったのに。
それなのに、やっぱり……ふとした瞬間に私の頭をチラついて、忘れさせてくれない蒼真の存在に胸が苦しくて。


きっと今日1日、心の底から笑えていなかったんだ。
如月玲
如月玲
……秋華さんには
きっと、好きな方がいるんですね
西園寺秋華
西園寺秋華
……え?
如月玲
如月玲
僕がどんなに頑張っても
きっとその人を超えられない
如月玲
如月玲
違いますか?
西園寺秋華
西園寺秋華
……っ、ごめんなさい
如月玲
如月玲
謝らないでください!
責めてるわけじゃないんです
如月玲
如月玲
今日1日、本当に楽しかったです
……良い思い出になりました
西園寺秋華
西園寺秋華
如月さん……
如月玲
如月玲
この見合いはなかったことに
父には僕から上手く伝えます
如月玲
如月玲
その代わり、秋華さん
幸せになってくださいね
如月さんは、どこまでも優しくて、強くて。
私なんかにはもったいないくらい良い人。

如月さんも、どうかお幸せに。
西園寺秋華
西園寺秋華
如月さん、本当に本当に
ありがとうございました


〜西園寺家〜


あれから送るという如月さんに首を横に振って、滅多に歩くことのない距離を歩いて帰ってきた。

いつもは絶対に送迎の車があるから、自分の足で歩くって、何だか新鮮な気持ちだった。
西園寺秋華
西園寺秋華
ただいま
雪平蒼真
雪平蒼真
おかえりなさいませ
如月様とのデートはいかがでした?
西園寺秋華
西園寺秋華
……楽しかったよ!
本当に本当にすっごく楽しかった
西園寺秋華
西園寺秋華
優しくて、一緒にいて居心地がいいし
色んな話をしてくれて飽きないし
笑わせてくれるし……
西園寺秋華
西園寺秋華
如月さん、とっても良い方
……蒼真が言うみたいに
申し分のない相手だよ
つい、蒼真を前にして強がってしまった。

ペラペラと息継ぎも忘れて喋ってから、ふと我に返って項垂れる。

……バカだな、私。
素直にやっぱり蒼真が好きだって言えたらいいのに。
西園寺秋華
西園寺秋華
ごめん、着替えてくるね
このままじゃ蒼真に八つ当たりしてしまいそうで、慌てて蒼真に背を向けた私は
雪平蒼真
雪平蒼真
待って、俺の話はまだ終わってない
───グイッ

強い力で引き寄せられて、次の瞬間には蒼真の腕の中に。

驚いて目を見開いた私に、蒼真の綺麗に整った顔がまるでスローモーションみたいに近づいて
西園寺秋華
西園寺秋華
……っ!?
唇に、ほんの一瞬、触れるだけのやさしいキスをした。
雪平蒼真
雪平蒼真
本当は俺もずっと
秋華が好きだったよ
雪平蒼真
雪平蒼真
……他の男と見合いなんてするな
西園寺秋華
西園寺秋華
そ、蒼真……?
待って、頭が追いつかないよ
雪平蒼真
雪平蒼真
執事の俺とお嬢様の秋華じゃ
生きる世界が違うと思ってた
雪平蒼真
雪平蒼真
だけど、誰にも譲りたくない
他の男と結婚なんてさせたくない
ギュッと私を抱きしめる蒼真の腕に、これは夢なんかじゃないって実感する。

嬉しくて、嬉しくて……どんどん溢れる涙は止まることを知らない。

もうきっと、交わらないんだと思ってた。
蒼真とは結ばれない運命なんだって……。

だけど、蒼真も私を好きだって言ってくれた。この先、これ以上の喜びにはもう出会えないんじゃないかってくらい、幸せで満たされていく。
西園寺秋華
西園寺秋華
しないよ
蒼真以外の人と結婚なんて
できるわけないじゃん
西園寺秋華
西園寺秋華
お見合いは破談になった……
私、どんなに頑張っても
蒼真しか好きになれないみたい
雪平蒼真
雪平蒼真
……よかった
もう間に合わないかと思った
西園寺秋華
西園寺秋華
責任とって幸せにしてくれる?
雪平蒼真
雪平蒼真
執事としてじゃなくて、
1人の男として秋華を護りたい
って、さっき旦那様にも話した
西園寺秋華
西園寺秋華
え!?お、お父さんに?
……何か言われた?
雪平蒼真
雪平蒼真
「秋華が蒼真を選ぶなら
むしろ俺は、大賛成だよ」って
西園寺秋華
西園寺秋華
っ……よ、良かったぁ
お父さん、昔から蒼真のこと大好きだったもんな。執事としてじゃなく、1人の男の人として蒼真のことを認めてくれたんだね。

嬉しくて、思わず蒼真にギュッと抱きつけば、グイと肩を押されて引き離される。
雪平蒼真
雪平蒼真
秋華
西園寺秋華
西園寺秋華
……なに?
雪平蒼真
雪平蒼真
好きだよ
雪平蒼真
雪平蒼真
一生かけて秋華を護る
だから、俺を選んでくれますか?
西園寺秋華
西園寺秋華
……うん!
私も蒼真が大好きだよ!
幼なじみでも、執事とお嬢様でもない……新しい私たちの輝きに満ちた未来が幕を開けた。

形は変わっても、これからもずっと私のそばにいてね。

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