確かに、私たちの間で挟まれて、零くんも居心地が悪かっただろう。
それでもこうして、私のために力を貸してくれるのは、彼の優しさ以外のなにものでもない。
その言葉に、私は息を呑んだ。
もしも、あのメッセージの通り、想太が自分の死を予見していたとしたら。
私を今以上に悲しませないために、自ら遠ざけたのだと考えることもできる。
あの想太なら考えそうなことだとも思えるが、大病を患っていたわけでもないのに、死の予見などできるのか。
やはり、あり得ないと考えるのが普通だ。
考え込んでしまった胡桃を心配し、お母さんは私の顔を覗き込んでいた。
彼女なら、謎のメッセージの件も真剣に聞いてくれそうだが、余計な心配を増やしてしまうかもしれないと、躊躇する。
彼女もきっと、何も知らない。
あのメッセージを送るような人物でもないはずだ。
でも、せっかくここまで来たのだから、もっと情報を集めたい。
どうすればいいか考えて、私は名案を思いついた。
交渉してみると、彼女は意外にもあっさりと許可してくれた。
私が零くんを見上げると、彼も少し驚いた顔をしている。
二階に案内され、零くんと一緒に想太の部屋に入った。
私も数回来たことがあるけれど、ほとんど変わっていなかった。
ベッド、クローゼット、勉強机を順番に眺めていると、次の本棚の上にいくつか写真立てがあった。
そこには、私とのツーショット写真も飾られている。
反射的に叫んでしまいそうになり、私は咄嗟に口元を押さえた。
私のことがどうでもよくなったのであれば、写真などすぐ処分しそうなものなのに。
想太は、あれからずっと飾ったままなのだ。
零くんも写真に気付いたようで、暗い表情のまま沈黙していた。
想太のお母さんは、しみじみとそう言った。
彼女の言うとおりならば、どうして想太は私を振ったのか。
彼女の目がある以上、想太の部屋の中を詳しく調べるのもためらわれ、私と零くんは帰ることにした。
外に見送りに出てきてくれたお母さんに礼を言って、私たちは寂しさを抱えながら、帰り道を歩き出した。
【第16話につづく】
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。