『零へ
きっと驚くと思うけれど、今から伝えることをどうか信じてほしい。
いたずらでも、ドッキリでもない。
この世でたった一人信じられるとしたら、僕には零しかいない。
だから、頼らせてほしい。
僕には、少し先の未来を予見する力がある。
それが数日後なのか、数ヶ月後なのか、数年後なのかまでは不確かだけれど、変えられない運命であることは確かだ。
小学生の時にこの力に気づいたけれど、怖くて誰にも言えなかった。
そんな馬鹿げた話、誰が信じるか、と思うだろう。
でも、僕は近いうちに、何らかの事故に巻き込まれて死んでしまう。
どんなに頑張っても、どうやっても、それを回避することはできない。
僕の死を以て、僕の言ったことが正しいと信じてもらえると思う。
だから、僕がいなくなった後のことを零に託したい。
胡桃を幸せにできるのは、零だけだ』
到底信じられないことが、そこに書かれていた。
このメール自体が偽造されたものかと疑ったけれど、送信元のメールアドレスは間違いなく想太のものだ。
零くんは、一ヶ月前の出来事をゆっくりと話し始めた。
***
その日、零くんは珍しく声を荒らげたそうだ。
想太に対して詰め寄ると、想太は取り乱すことなく冷静に、首を縦に振って肯定した。
零くんが呆れかえっていると、想太は穏やかに笑ったらしい。
静かにそう語る想太に、零くんはそれ以上何も言えなかった。
【第19話につづく】
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。