送り主の候補を考えてみる。
やっぱり、零くんが真っ先に浮かんだ。
想太の親友であり、私たちのよき理解者だから。
でも彼は、想太が私を振った理由については話そうとしなかった。
零くんは、普段からクールで口数も少ないけれど、誠実で思いやりに溢れた人だ。
こんな、嫌がらせにも似た回りくどいやり方はしないだろう。
それから数日、私は考えに考えた。
匿名アカウントからも、何のアクションはなかったため、知りたいならとことん調べるしかない、と私は決意した。
***
そして週末の土曜日、私は再び地元へと戻ってきた。
あのメッセージの送信者を探すための方法をいくつか検討してみたけれど、私と想太の共通点を辿っていくしかない、という結論になったのだ。
実家の両親は、私に何かあったのかと案じていたけれど、私は二人を安心させるように笑った。
まず訪れるべきは、私と想太が出会った原点――学習塾だ。
そこまで口にして、彼女は察したように口を噤んだ。
田辺先生は、私が通っていた当時も働いていた女性職員だ。
私と想太は、数学の授業でお世話になっていた。
彼女のことなので、当然想太の事故死のことも知っていた。
葬儀の前日、彼女は通夜に参列したそうだ。
無理に笑って返すと、田辺先生は唇をぎゅっと結んで、切なげに目を細めた。
私と想太は、付き合っていることを特に言いふらすこともしなかったし、どちらかというと零くんも一緒にいることが多かった。
気付かれていないと思っていたけれど、田辺先生はさすがだ。
駄目元で質問してはみるけれど、やはり彼女は何も知らなかった。
私には頑なに理由を言わなかった想太が、塾の講師に隠し事を話すというのも考えがたい。
想太に出会った時のことは、今でも鮮明に覚えている――。
【第6話につづく】
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。