懐かしい夢は途切れ、母に体を揺すられ、目を覚ました。
時計を確認すると、一時間弱眠っていたようだ。
風呂場に移動すべく、ぼうっとしたまま起き上がる。
その時、鞄の中に入れっぱなしだったスマホが、通知音を鳴らした。
音の種類は、SNSメッセージを示している。
ドキッとして、一気に頭が冴えていった。
あの匿名アカウントかもしれないし、全く関係のない詐欺まがいの迷惑メールかもしれない。
母が先に部屋を出て行くのを確認して、私は急いで鞄を探り、スマホを手に取った。
通知をタップして、メッセージを開く。
やはり、また新たな匿名アカウントから送られてきていた。
そこには――。
【桜野想太は、自分がいずれ死ぬことを知っていた】
そう書かれている。
背筋を嫌な冷たさが駆け抜けていき、私は怖くなって、スマホを取り落としてしまった。
想太が死ぬことを知っていたなんて、どうして分かるのか。
それとも、根拠もないデタラメなことを言って、私を怖がらせようとしているだけなのか。
震えが止まらないけれど、零くんに連絡するよりも先に、この送信者とコンタクトをとるべきだと、私は判断した。
勇気を出してスマホを拾い、返事を書き込む。
『それが、私とどう関係あるんですか? あなたは誰ですか?』
返信ボタンをタップした数秒後。
そのアカウントはまたもや退会済みになり、それ以上の連絡がとれなくなってしまった。
私の返信を読んだのかすら、分からない。
軽く混乱しながらも、送信者の正体について考えてみる。
でもやっぱり、誰も思い当たらない。
なかなか出てこない私を心配して、母が部屋の外から急かしてくる。
着替えの準備をしながら、零くんにも今の出来事についてのメッセージを送った。
零くんからは、すかさず反応が返ってくる。
『教えてくれてありがとう。俺も犯人については調べてみるから、少し様子を見よう。暗くなったし、この後はもう出歩かないほうがいい』
分かってくれる人がいるだけで、安心できる。
零くんのおかげで、私はどうにか落ち着きを取り戻し、風呂場へと向かった。
【第14話につづく】
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。