四限の講義・思考心理学の担当教授がそう告げた。
ノートの内容をきれいにまとめ終えた私は、帰る準備をしようと鞄を開く。
片付けをして、最後にスマホを手に取ると、一件のメッセージ通知が目に入った。
送信者は、河端零――高校時代からの、私の友人だ。
とある事情から、私が彼と連絡を取り合うことは、高校を卒業後二年以上もなかった。
成人式も、中学校ごとに行われたため、顔を合わせていない。
久しぶりの連絡に驚きながらも、講義室を出て、メッセージを開く。
何気ないその動作の後に待っていたのは、衝撃だった。
『胡桃、久しぶり。
きっと驚くと思うけど……とても大事なことを知らせなければならないと思って連絡したんだ。
想太が亡くなった。
これを読んだら、連絡をもらえると嬉しい』
にわかには信じられない文面に、私は呆然と立ち尽くした。
後ろから来た女子学生に軽くぶつかり、ふらふらと壁際に移動する。
桜野想太は、私が高校時代に約二年間付き合っていた、同い年の男の子だ。
いわゆる、元カレ。
高校こそ違ったけれど、通っていた塾で出会った。
そこで意気投合して、交際に発展したのだけれど――。
高校三年生になってしばらくして、何の前触れも理由もなく、私は想太に振られてしまった。
今回、連絡をくれた零くんは、想太の小学校時代からの親友だ。
想太が彼を紹介してくれたことで、私も後から彼と仲良くなった。
一時期は三人で楽しく過ごしていたのに、私たちが別れてしまったせいで、零くんにも気を遣わせてしまった。
高校を卒業後、私たちはそれぞれ別の大学に進学した。
そんなこんなで、私たちは会うことも連絡を取り合うこともせず、疎遠になっていったのだ。
震える手で、零くんに返信を打つ。
何度も文字を間違えながら、最後に『教えてくれてありがとう』とくっつける。
零くんからは、すぐにまた返事がきた。
『想太の葬儀は地元で行われるから、胡桃も一度帰ってこないか』と。
零くんは、同級生たちに連絡を回す役目を担っているらしく、私にも知らせた方がいいと考えてくれたらしい。
これで「行かない」とは、言えなかった。
それに、想太がどうして亡くならなければならなかったのか、知りたい思いも強い。
私はショックを拭えないまま、零くんに地元に帰ることを約束した。
【第2話につづく】
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。