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第10話

思い出を共有できる人

零くんの言っている内容も、意図も分からず、私は呆気あっけにとられた。


なぜ、想太が送信した、などと思えるのか。


零くんは、滅多に冗談など言わない人だし、想太のことでふざけるとも思えない。
永沢 胡桃
永沢 胡桃
えっ……いやいや、想太は亡くなった……んだよ?

私が真剣にそう返すけれど、零くんは納得していないようだった。
河端 零
河端 零
そうなんだけど。
ほら、メッセージって今は予約して送れるし
永沢 胡桃
永沢 胡桃
予約……あっ、時間指定?

私が使っているSNSには、確かにその機能がついている。


ならば、零くんが言っていることも、一理あるのだ。


しかし、わざわざ匿名にする理由も不明だし、想太は不慮の事故で亡くなったのであって、自分が命を落とす運命にあることなど分かるはずもない。


その上、匿名アカウントは誰かの手によって退会されたのだ。


今、生きている誰かが操作しないと難しい。
永沢 胡桃
永沢 胡桃
ううん。
やっぱり、想太じゃない

私は、そう結論づけた。
河端 零
河端 零
……そうだな。
想太はこういうことをする奴じゃないし
永沢 胡桃
永沢 胡桃
うん
河端 零
河端 零
でも、もしもまたこういう気味の悪いことがあれば、今度はすぐに俺に相談してほしい。
胡桃の力になりたい

考えに同意してくれただけでなく、零くんが心配してくれるのが、ただ単純に嬉しかった。


想太との思い出を共有できる、唯一の友人だ。
永沢 胡桃
永沢 胡桃
ありがとう
河端 零
河端 零
友達なんだから、当たり前だろ
永沢 胡桃
永沢 胡桃
えへへ……。
なんか、ちょっと元気出た
河端 零
河端 零
そうか。
ならよかった

零くんのおかげで、久しぶりに笑えた気がした。


喫茶店のマスターとその奥さんの通夜に参加するため、私たちは一度、それぞれの実家に帰宅することにした。


でも零くんは、「心配だから胡桃を家まで送る」と言って譲らず、私もそれに甘えさせてもらった。



***



河端 零
河端 零
明日、胡桃さえよければ、想太の実家に行ってみないか?

通夜からの帰り道、零くんがそう提案してきて、私は大きく頷いた。


葬儀では想太の母親と顔を合わせたものの、元カノという立場上、一人で家を訪問するのは勇気が足りなかったのだ。
河端 零
河端 零
じゃあ、明日もまた迎えにくるよ
永沢 胡桃
永沢 胡桃
うん、お願いします。
今日はありがとうね
河端 零
河端 零
どういたしまして。
おやすみ。
ちゃんと寝ろよ

再び実家の前まで送ってくれた零くんに何度もお礼を言って、私は玄関を開けた。
永沢 胡桃
永沢 胡桃
ただいまー
胡桃の父
おかえり、胡桃
胡桃の母
晩ご飯、できてるわよ。
今日はなんと……すき焼き!

父も母も、想太のことを話題にはしないけれど、私の心情を気遣ってくれていた。


もう、暗い顔ばかりしていられない。
永沢 胡桃
永沢 胡桃
うわぁ~、すき焼きだー!


両親には笑顔を見せた。


晩ご飯はおいしかったし、家族と一緒だと不思議と安心できる。


その後、正月以来、数ヶ月ぶりに自分の部屋へと戻った。


葬儀の日はここに寄ったものの、当日中にまた向こうに戻ったので、ゆっくり過ごす暇がなかったのだ。


楽な格好に着替え、母が干してくれたふかふかの布団に突っ伏した。


寝返りを打ち、仰向けになって天井を眺めながら、私は想太との思い出をなぞっていった。

【第11話につづく】