はあぁぁぁっ。
声が出る寸前になるくらい大きなため息をつく。
と同時に、嗚咽が漏れる。
なんで、私を置いてけぼりにするの。
__私を、殺すつもりなの。
思えば、いつもそうだった。
貴方が先に大人になる。
貴方が先に高校受験を経験して、忠告を受ける。
私の歩く道は、彼が踏んだ後の道だった。
それはいつも1年の間隔が開いていて。
その差が縮まることは、なかった。
それが、この星の残酷な理の一つであったから。
そして、もう一つの残酷な理。
生き物は、どう足掻こうといつか死する。
早かろうと、遅かろうと。
彼は、前者。
飲酒運転だったという。
私のほんの一歩手前で起きた残虐な事故だった。
赤色のフェラーリ。
なんというか、あっという間だった。
必要以上に引き摺られて、無惨な姿になった彼は病院に担ぎ込まれた矢先、星になった。
彼の心臓が使い物にならなくなった、その日から丸一年の今日。
私と彼の差は、丁度1年。
私が走って辿り着いたのは、彼が死んでからつい昨日まで封鎖されていたとある雑居ビルの屋上。
目的は単純明快、いつもの一年遅れを実行するためだ。
体が宙に舞った途端、思った。
彼は、まだ天国にいるだろうか?
この辺りで一番高いビル。
貴方も、誰かに死に様を見届けて貰いたかったの?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。