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第4話

三頁目
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2021/09/24 09:19
◯◯
そんな、なつき…那月…!!
那月
沙夜?どうした!?
それまでなにもなかったその顔に焦りが見えて、再度ナースコールを押そうとする那月を止めた。
そういえば、名前も呼んでくれた。
元に戻った。
沙夜
ねぇ那月、私は貴方からなんにも奪いたくないの!
那月
…“お話”を聞いたのかい?
私はなんとかこくりと頷く。
あぁ、やっぱりそうする他ないか。
沙夜
あの、さ
沙夜
私を、殺して?
私の分を分け与えたから短くなった彼の余生。
だったら、私が死ぬことで取り戻させようと思った。
それが無理でも、せめてもの罪滅ぼしになるから。
彼のために懺悔しながら死にゆくのを想像しても、不思議と嫌な気はしない。
那月
…俺が、沙夜と余生を分け合いっこした理由、分かる?
軽く、首を横に振った。
那月の気が知れない。
そんな意を込めて。
那月
いいかい、沙夜。俺達は、誕生日が命日になるんだ
私が身投げをしたのは聖夜、クリスマス。
その約10週間後には2月14日のバレンタイン、私達二人の誕生日だ。
沙夜
誕生日が、命日に…
那月
あぁ、そうだよ。俺は沙夜と一緒に死にたかったんだ…何て言ったら、引く?
沙夜
…ううん、ううん
再度、涙。
両手でごしごし拭って、その硬い胸板に顔を埋める。
沙夜
ありがとう、那月。
顔を上げて、微笑み合う。
1年の差が、ifによって縮まった瞬間だった。

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