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それまでなにもなかったその顔に焦りが見えて、再度ナースコールを押そうとする那月を止めた。
そういえば、名前も呼んでくれた。
元に戻った。
私はなんとかこくりと頷く。
あぁ、やっぱりそうする他ないか。
私の分を分け与えたから短くなった彼の余生。
だったら、私が死ぬことで取り戻させようと思った。
それが無理でも、せめてもの罪滅ぼしになるから。
彼のために懺悔しながら死にゆくのを想像しても、不思議と嫌な気はしない。
軽く、首を横に振った。
那月の気が知れない。
そんな意を込めて。
私が身投げをしたのは聖夜、クリスマス。
その約10週間後には2月14日のバレンタイン、私達二人の誕生日だ。
再度、涙。
両手でごしごし拭って、その硬い胸板に顔を埋める。
顔を上げて、微笑み合う。
1年の差が、ifによって縮まった瞬間だった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。