スタッフさんに呼ばれ 、メイク道具を持つ 。
深く深呼吸をする 。
まずは 、脱落した19人のメイク直し 。
インタビューや写真撮影のために 。
このドアを開けると 、19人がいる 。
どんな顔すればいいんだろう 、
私は込み上げてくる涙を押し殺し 、
ドアノブに手をかけた 。
『 …… メイク直し 、します 。 』
恐くて前が見れない 。
下を向いてそう言った 。
何やってるんだよ私 。
顔見なきゃメイクできないのに 。
そう思ってたら声をかけられた 。
栗田「 あなた、…… 」
『 っ……、…泣 』
なんで ……なんで……?
声だけでわかる
栗ちゃんじゃん 、
『 なんっ、で……泣 』
栗田「 …なんであなたが泣いてるん笑 」
『 ……なんでって、…泣 』
栗田「 みんなあなたの事待ってたんだよ 」
『 ……え?泣 』
拭う力もなく 、涙が床に垂れ落ちる 。
航平の言葉に驚いて 、顔を上げる
四谷「 …あなたちゃん、今まで僕らのメイクをしてくれたのはもちろん、辛いときや落ち込んでるときに声をかけてくれて、本当に救われたし感謝してます。 」
笹岡「 本当にありがとう。 」
笹岡くんの言葉に乗せて、
みんなが頭を下げる。
何だか申し訳なくなってきた。
私の涙は止まらない。
『 みんなの方こそっ、私なんかのメイクを…っ、文句言わずに受けてくれて有難うっ…泣……みんなに逢えて幸せだし、…………もう…本当にみんなここまで良く頑張ったよ。お疲れ様、っ。 』
言葉が詰まって上手く喋れない。
てかやばい、メイクしなくちゃ
福田「 あなたちゃん、今までありがとう。 」
『 歩汰………例の心霊現象の件は本当にありがとうね? 』
福田「 困ったらまた呼んでくださいよ?いつでも行きますから笑 」
『 っ……バカ、泣 』
笹岡「 ……あー、もう終わっちゃったのか。 」
『 ……笹岡くん、終わってないですよ。 』
笹岡「 ……え? 」
『 笹岡くんの人生はまだ長いです。"日プ2で脱落した人生"じゃなくて"日プ2を経験した強い人生"なんですよ。きっと笹岡くんの良さに気づく事務所もいるはずです。だからこれからも……作詞作曲だったり、アイドルの道を諦めないでいてくれますか? 』
笹岡「 ……もう…我慢してたのにそんなこと言われたら泣いちゃうじゃん、笑 」
『 も〜、今直したばっかりなのにメイク落ちちゃいます。 』
笹岡「 いつでも俺のメイク直してね。 」
『 もーー……ズルいですそういうところ。 』
笹岡「 ははっ笑、これからも頑張るから応援しててね?いつかはあなたちゃんに向けて曲作ろうかな〜。 」
『 ……夏だね。 』
笹岡「 えっ、急にどうした?笑 」
『 泣かないために我慢します 』
笹岡「 もう泣いてるじゃん笑 」
それから色んな練習生のお別れの言葉を交わした 。
そして最後の君 、
一番お別れしたくない人 。
『 …………っ、泣 』
栗田「 いや涙拭いたのに俺の顔見て泣かないでよ笑 」
『 ……航平、 』
栗田「 はいはい泣かないの。 」
『 …航平………… 』
自分が一番泣きたいだろうに
私の涙を拭ってくれる。
そういう優しいところ、大好きなんだよ。
『 …私が初めて仲良くなれた練習生は、航平なんだよ? 』
『 あの時、階段で航平が話しかけてくれなければ私は今こんなに練習生と仲良くなれてなかったかもしれないし、何より私が今仕事頑張れてるのは航平があの時明るく接してくれて、……私っ、"この子みたいな人のためにメイク頑張ろう"って思えたの……航平には、1番感謝してるのっ……泣 』
嗚咽が止まらなくなる
背中を摩ってくれる手が暖かい。
栗田「 ……俺、あなたに会えたこと、絶対に一生忘れない。俺と仲良くしてくれて、ありがとう。 」
『 ……航平………本当にさ…、もうヤダ……さよならなんかしたくない。 』
栗田「 ……はあ、我慢してたのに…笑 」
『 ……え、? 』
航平の目を見ると、大粒の涙が流れていた。
栗田「 もう行かなきゃだね。 」
航平の言葉で気づく。
他の練習生はもう合宿所に帰った
『 嫌だよ……っ、 』
栗田「 ……ファイナルのみんな、きっとメイク待ってるよ。 」
『 ……だって…航平とお別れなんかしたくないもん、。っ 』
栗田「 ……俺は、絶対に夢を諦めない。これからもこの道を歩き続ける。だから応援しててください。 」
『 …… 』
栗田「 いつか、あなたの目に見えるところで活動出来るまで頑張るから。またね? 」
『 ………っ、 』
返事ができない。
声が出ない。
こんなに泣いたのなんて初めてだよ。
泣きすぎて息ができない
そんな私を優しく包み込む。
栗田「 ごめっ、今日だけ…。 」
『 っ、……泣 』
航平 。
恋愛感情は一ミリもない。
それはお互い分かりきってること。
でもそんな気持ちじゃなくて、
私は大好きだ。
航平の存在が大好きだ。
そう思うと、考えるよりも先に言葉が出た
『 逢えたことが、宝物でした。またね。 』
私がそう言うと、
" いつものあの笑顔 " で、
「またな」って手を振ってくれた。
最後くらい、笑顔で終わりたい。
そしてそのドアがしまった瞬間、
堰が切れたかのように出てくる涙。
必死に止めて、ハンカチで拭く。
切り替えてファイナル組の場所へ行く。
19人へ。
大好きだよ。
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いやぁ、切ないですね。
(なんか最終回みたいな感じだけど全然まだ続きます)
書きながら泣いちゃいました笑
ちょっと私の話をさせてください笑
あの日から栗田くんを忘れた日は1日もありません。
私たち国プの前ではいつも笑顔で、
誰よりもストイックに練習していた姿、
本当に大好きだった。
ここまで引きずるなんて思っていなかった。
そのくらい、私にとって大きな存在でした。
今、どこで何をしているのか分かりません。
でも、とにかく笑ってくれれば何でもいいです。
いつも笑顔でいてほしいです。
私からの言葉はたった一つです、
ありがとう。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。