第198話

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2023/03/21 17:47
電話に出るつもりじゃなかったのに。
指が勝手に通話を押していた。
久々に聞く馬鹿教師の声はいつも以上に小さくて元気がなくて…
声が聞けた嬉しさより、会いたいって気持ちとか罪悪感で急いで電話を切った。
あなた
…何やってるんだろ。
もう馬鹿教師とは関わらないって決めたのに。
今、会いたくて仕方ない。
あなた
……ん?
澪?
スマホに映し出された澪の名前。
出なかったら出るまで掛けてくるから、とりあえず電話に出る。
起きてた?
あなた
うん。
ミナ先生に渡したよ。
あなた
…ありがとう。
先生……泣いてた。
あなたの下の名前の事、凄く好きなんだって
実感させられたよ。
そんな話、聞きたくない。
渡したって事だけでいいのに…
あなたの下の名前が決めた事なら何も言わないけど…
好きな様に生きてもいいんだよ?
好きな様にって何?
そんな事したら、おじいちゃんや澪が父親あいつに悪く言われるじゃん。
それに……
馬鹿教師の人生を壊す事になる。
あなた
……もう、切るよ。
呼吸が乱れて苦しい。
整え方が分からない。
自由の国居るのに、何一つ自由じゃなくて…
クソ狭い鳥カゴの中で、息すらまともに出来ない。
分かってたはずなのに……


たかが1週間しか経ってないけど、アメリカに来てから毎日意識が飛ぶまで過呼吸に襲われていた。
そして、意識が飛ぶ前に必ず馬鹿教師の顔が頭をよぎる。


……何時間、意識なかったんだろう。


スマホの通知音で、目が開く。
既読すらつけてないのに毎日大量に届くモモからのメッセージ。
読むのが怖かった。
けど、既読にだけはしようと思って700以上あるメッセージ画面をひらいた瞬間。


着信:モモ


今日は、運勢最悪で最高な日だなって思いながら意を決して電話に出た。
モモ
モモ
あなたの下の名前ーーーーーーー!!!
相変わらず、うるさい。
あなた
……何?
モモ
モモ
何?ちゃうわ!!!
勝手にアメリカ行くのはええけど
連絡くらいしてくれてもいいやん!
あなた
…ごめん、忙しかった。
モモ
モモ
絶対、嘘や。
いや、多少なりとも忙しかったよ?
来て1週間。
大学の手続きとか、その他諸々あったし…
それに、過呼吸でぶっ倒れてる時間が長いからレポートとかフラフラな状態でやってるから。
モモ
モモ
…みんな、寂しがってるで?
あなた
ごめん…
モモ
モモ
反省しとるならええわ。
とりあえずな、メッセージの
グループ作ったから!
みんなに通知ミュートにしてって
お願いしたで時差とか考えんでいいし。
やで、そのグループ今すぐに入ってや。
モモ達の優しさに少し救われた気がする。
その後、ちょっと話をして電話を切った。
あなた
……入るだけはしとこ。
画面に映し出された、私がグループに参加したという文字。
その数分後には、そのグループに入ってる陽キャ姫とチェンチェン。
あと、クラス代表と副代表。
最後にモモからメッセージが送られてきた。


"みんな、ありがとう"


その一言だけを返して、スマホをポケットにしまう。
タバコに火を点けて、深呼吸するみたいにゆっくり煙を肺に入れ込んだ。

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