「 どうして指示されなきゃいけないの 」
「 拒否権は私にあるので 」
「 無理なものは無理 」
「 果てしなく。」
イリノは呆れた顔をしたけど
こっちの方が呆れる。
:
あの日以来、何故かイリノは
私によく心配ごとをしてくる。
私なんか優しいから
家を出た瞬間に眼鏡してあげてるのに。
「 最近なんなの?」
「 だいぶとおかしい様だけど 」
「 あってもイリノには関係ないじゃん 」
「 お母さんじゃあるまいし、」
こう言ったけど、
何もなかったのが現実。ある訳ない。
圧倒的に精神年齢が低くて困る。
「 イリノの為に
眼鏡つけてあげてるんだからね?」
そう言いながら見せる笑顔は
不覚にも惹きつけられるし、
こう見えて心は優しいんだと気づいてしまう。
:
お昼の時間。
お気に入りの屋上で
ゆったり食べようとしたのに
聞いたことのある声が邪魔をした。
「 やだ、1人がいい 」
「 可愛い女子の元に行ってきな 」
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。