第26話
🐨
🐨 side
2012.2月
ガシャガシャガシャガシャ__________
またやってしまった……
駐輪場で自転車を倒してしまったのはこれで何回目だろう……
気をつけているはずなのに倒してしまう……
そんな自分にため息をつきながら、自転車を起こす。
誰も手伝ってくれる人はいない。
みんな見てみぬ振り。
しょうがないか、みんな忙しいだろうし……
なんて思っていると
後ろから声をかけられた。
反射的に謝りながら振り向く。
振りかえって、一人の女の子と目があったその瞬間、僕は時が止まったように動けなかった。
彼女の少し高めの声、心配そうな表情、首をかしげる仕草……
彼女の全てが僕の心を奪っていった。
彼女から声をかけられ、はっと我に返る。
そう言ったときにはもう、彼女はその華奢な体で自転車を起こしていた。
あんなに細い腕や脚なのにどうしてあんなにパワフルなんだろう……
そう思えるほどに彼女は本当にパワフルで、二人で起こし始めた自転車はあっという間にもとに戻った。
彼女にそう言われて右手を見ると、指から血が出ていた。
彼女は笑いながら、ポーチらしきものから絆創膏を取り出した。
たいした怪我でもないし、わざわざもらうのは申し訳ない気がした。
けれど彼女は笑いながら、僕の手を引き寄せた。
上目遣いで、こんなことを言われたら断れるはずがない。
というか、断りたくない……///
しどろもどろにお願いすると、彼女はまた笑いながら僕の手に絆創膏を貼ってくれた。
彼女の手が触れているところが熱くて、
心臓の音が聞こえてきそうで、
僕は彼女に見惚れていた。
そう言って満面の笑みで僕に笑いかける彼女を見て確信した。
運命の人だと。
お礼もちゃんと言えずに彼女は行ってしまった。
けれどなぜか焦りはなかった。
きっとまた会える。
そう思っているから。
キムナムジュン
運命の人に出会いました。