第2話

第2話 もしかして?
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2019/04/21 09:01
花岡 美鳥
花岡 美鳥
えっ

風馬の剣幕に、美鳥は驚いて後ずさりした。


明らかに、彼は美鳥目がけて近づいてきているのだ。


風馬はいつも寡黙かもくで無表情。


がっちりとした体格に黒の短髪、右耳についた大きいシルバーピアスが印象的だが――いかついし、恐い。


それに、元・柔道部のエースだ。


まるで睦月の用心棒のようで、誰からも恐れられている。
花岡 美鳥
花岡 美鳥
(もしかして……じっと見てたの、失礼だった!?)

美鳥は全身から血の気が引いていくのを感じつつも、風馬から目をそらせずにいた。


そしてついに、風馬が美鳥の直前で立ち止まる。
砂川 風馬
砂川 風馬
お前、いつも……
花岡 美鳥
花岡 美鳥
ひっ!
砂川 風馬
砂川 風馬
あ、おい!

腹に響くような低い声で風馬に話しかけられ、美鳥は肩を跳ねさせる。


そのまま恐怖に耐えきれず、ひざから崩れ落ち――気絶してしまった。




***



花岡 美鳥
花岡 美鳥
(……あれ?)

美鳥が目を覚ますと、ふかふかの布団の中にいた。


周囲にカーテンがあるのを見ると、どうやらここは保健室のベッドらしい。


失神する前のことを思い出しながら、美鳥が上体を起こすと、足音がした。
養護教諭
花岡さん、目が覚めました?
花岡 美鳥
花岡 美鳥
あ、はい……

女性の養護教諭が隙間すきまから顔を出し、にこりとしたかと思いきや、カーテンを開けていった。


そこにいたのは彼女だけではなく――風馬と睦月が、きまりの悪そうな様子で立っている。

花岡 美鳥
花岡 美鳥
あっ!
養護教諭
砂川くんと乾くんが、あなたを運んできてくれたのよ
花岡 美鳥
花岡 美鳥
そ、そう……ですか。
ありがとう、ございます……

美鳥は彼らを前にして、緊張と嬉しさで混乱し、硬直していた。


訳も分からないまま、逃げるように視線を動かして時計を確認すると、まだ昼休み中だ。
花岡 美鳥
花岡 美鳥
(この状況は、どうしたら……!?)
砂川 風馬
砂川 風馬
その……怖がらせるつもりはなかったんだ。
悪かった
乾 睦月
乾 睦月
僕からも、ごめんね。
風馬はこの見た目だから、怖かったでしょ?

先に風馬が沈黙を破って腰を折り、次いで睦月も同じように謝った。


頭を下げる姿勢が、2人ともそっくりだ。
花岡 美鳥
花岡 美鳥
あ……いえ!
私こそ、人と話すのに慣れてなくて……失礼なことをしたならごめんなさい!

しどろもどろになりながら、美鳥も謝る。


3人の会話を聞いていた養護教諭は、くすくすと笑ってその場から離れていった。
花岡 美鳥
花岡 美鳥
あの、どうして私に話しかけてきたんでしょうか……
砂川 風馬
砂川 風馬
ああ、それは。
お前、いつも俺らのことを見てるから。
何か言いたいことでもあるんじゃねえかと思って
花岡 美鳥
花岡 美鳥
……へっ

――完璧にバレている。


いや、いつも睦月を目で追っていたら、気付かれない方がおかしい。


風馬は気を遣って話しかけてくれたというのに、怖がって気絶するなんて、なんという失態か。
花岡 美鳥
花岡 美鳥
ほ、本当に、ごめんなさい!
砂川 風馬
砂川 風馬
いや、別にお前が謝らなくていいって……
花岡 美鳥
花岡 美鳥
見ていたことは認めますが、け、決してやましい気持ちはありませんので!
乾 睦月
乾 睦月
ふふっ。
花岡さんっておもしろいね

憧れの人を目の前にしてうまく話せない美鳥だが、2人の穏やかな態度に触れて、次第に落ち着いてきた。


睦月も美鳥の行動を気にしている訳ではなさそうだ。
花岡 美鳥
花岡 美鳥
……あれ?

困り顔の風馬と微笑んでいる睦月をよく見比べてみると、目と鼻と口、それぞれのパーツが酷似こくじしている。


それはもう、他人とは思えないほどに。


2人は雰囲気が違うし、今まで睦月ばかり見ていて分からなかった。
花岡 美鳥
花岡 美鳥
もしかして……兄弟? 双子?

美鳥は自然と、そう口に出していた。

【第3話につづく】

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