オメガバース×タイムスリップのお話です。
色々詰め込んだなーっていう感じですね。

2人は付き合ってます。
ちょいてつしば←りょう風味ですが、りょうくんはほとんど出てきません。

しばゆーは1回天国に行ってしまうので、苦手だなという方は即ブラウザバックしてください。
※最後は救済あります。安心してください。

てつや→アルファ
しばゆー→オメガ
りょう→アルファ

診断メーカーから一部抜粋させて頂いています。


それではどうぞ→→→









てつやside





汗をかく麦茶のコップを指先でなぞると、氷のカランという音がリビングに響いた。
8月ももう下旬だと言うのに、外では蝉がせわしなく鳴いていた。

しばゆー、と呼ぶと、彼はすぐ隣の席に座った。
俺たちは付き合って1年が経つ。
そろそろ番になってもいいんじゃないか、と常々思っている。
心臓がはち切れそうになりながら、しばゆーの手を掴む。
手汗が凄い。


「俺たち、番になろう？」


少しの沈黙の後、しばゆーは俯いてしまった。
耳がほんのり赤くなっている。


「……いいよ、」


そう言うと、逃げるように椅子から立ち上がった。
ちょっと待って、としばゆーの腕を掴むと、顔を真っ赤にして汗をかいていた。
しばゆーを元の椅子に座らせ、用意していた指輪を渡す。
しばゆーの薬指に、シルバーの指輪をはめた。

「似合うじゃん」

「……ありがと、嬉しい」

照れながらも、しばゆーは笑顔でそう答えた。
自分の指輪もはめようとすると、

「俺がはめる」

と言ってしばゆーがはめてくれた。
指輪をはめた後、2人でそれを眺めた。とても幸せな時間だった。


その夜は、2人でラブホテルに向かった。
ホテルに着いて、部屋を指定する。
繋いだしばゆーの手から、緊張が伝わってきた。
ぎゅっと強く握ると、更に強く握り返してきた。
そして、2人で笑いあった。

部屋に入ると、ピンクのベッドが視界に入った。
ここで俺たちは番になるのか、と喉を鳴らす。

「風呂いこ」

と言うと、すぐに付いてきた。

風呂のドアを開けると、ジャグジー付きの大きな浴槽が目に飛び込んできた。

「でっけー」

「男2人でも余裕で入れるな」

そう言いながら、シャワーを出した。
体を洗おうとすると、

「俺が洗ってあげるよ」

と言って洗い始めた。
夫婦かよ、と思った瞬間しばゆーが

「夫婦かよ」

といったので、思わず吹いてしまった。

「今俺も同じこと思った！」

「心通じ合ってる〜」

そんな事を言いながらも、浴槽に入った。
風呂に入ってさっぱりしたところで、今日の本題について思い出した。
今までにも何度かセックスはした事がある。だから、特別何を緊張するわけでも無いのだが、番という言葉が恐ろしく魅力的に思えた。

しばゆーをベッドの上に仰向けに寝転ばせる。
頬に手を添え、軽くキスをした。
バスローブを脱がすと、しなやかで程よく筋肉の着いた体が露わになる。思わず固唾を飲み込んだ。
ベッドの横にあるタンスからローションを取り出した。
ローションを手に出すと、しばゆーの後孔に中指を入れた。
しばゆーの中は熱く、ビクビクと痙攣していた。

「大丈夫…？痛くない？」

「うん……大丈夫………」

肉壁を押し進んでいくと、小さなしこりを見つけた。
そこをぐいと押すと、しばゆーの嬌声が響いた。

「っあッ……！」

人差し指も難なく入り、執拗に中を解した。
必死に声を抑えようとするしばゆーの手をどかした。

「声、もっと聞かせて」

と言うと、

「恥ずかしいからやだ」

と返ってきた。いつも動画でいかがわしい声を出しているというのに、今更何を言ってるんだろうと笑いそうになった。
自身の昂りを取り出し、窄まりに充てがうと、しばゆーの後孔がキュッと閉まった。
ゆっくりと挿入すると、中の肉壁が吸い付いて来て、持っていかれそうになった。

「は、あッ……」

甘く掠れた声を漏らす。
奥までズン、と突くと、中がヒクついていて、快感に耐えられないといったようだった。
だんだん腰の動きを早めると、2人の声も大きくなっていった。

「ひァッ///ん、あアッ♡︎や、そこぉ……っ！///」

「ん……ここがいい………？」

そこを思い切り突くと、一気に中が締まった。

「っうあ、てつやっ……好き……っ！」

「っ………俺も………好きだ……っ」

涙を流しながら言うしばゆーに顔を近付け、そっと拭ってやった。
食いつくようにキスをすると、背中に手を回して必死に返そうとしてくれた。

「うなじ……噛んで……！」

そう言われ、俺は思い切りうなじに噛み付いた。

「っぐ………！！」

うなじを噛んだ瞬間、同時にイってしまった。

「…………っごめん、痛かった？」

「……痛い……けど、これで番になれたんだと思ったら全然痛くない！」

そう言うしばゆーの顔は、幸せに満ちていた。
かく言う俺も、涙は出るわ鼻水は出るわでまともな顔をしていなかったと思う。
2人ともくしゃくしゃな笑顔で見つめ合った。



後日、産婦人科に行くと、お腹の中に赤ちゃんがいることが判明した。
2人は顔を見合って大喜びした。
10ヶ月後が待ち遠しかった。

「どっちの顔に似ると思う？」

「目元はしばゆーに似てて欲しいな、あ、あとセンスも」

「それじゃあてつやの要素ないやん‪w
俺はてつやの面白さが似てたらいいなと思う」

「ん？てことはしばゆーと俺のセンスが掛け合わさった超
絶面白い子供が生まれるって事！？
めっちゃ楽しみやん‪w‪w
早く生まれてこんかなー」

しばゆーのお腹を撫でると、お腹の中の赤ちゃんが蹴ってきた。

「しばゆー！！今この子が蹴ってきた！！
めちゃめちゃ嬉しい………」


俺は子供の為に赤ちゃんベッドを買ったりおもちゃを買ったりと、幸せの絶頂だった。
この時までは。














しばゆーがお腹に異変を感じ、病院に行きたいと言った。
どうやら陣痛が始まったようだった。
急いで病院に向かい、分娩室で必死に声援を送った。



しかし、しばゆーは常位胎盤早期剥離という症状になってしまったらしい。
それは、分娩室に入ってから数時間後に伝えられたことだった。
この症状になると、子供は半分以上助からず、助かったとしても障害を抱えて生きていくことがあると。産んだ親も危険な状態に晒されると。


頼む。生きてくれ。それだけでいいんだ。生きてさえいてくれれば。
急にこんな状態になって何が何だかよく分からなかったが、とにかくしばゆーと子供だけは生きてくれと願った。






帝王切開で子供を取り出してもらった。




子供はもう息をしていなかった。




数時間後、しばゆーも子供と一緒に天国にいってしまった。



帝王切開をすると出血多量で死亡の確率が上がるらしい。




なんでこんなことになったんだと、苦しくて苦しくて息が出来ない。
俺のしばゆーは、さっきまで笑っていたしばゆーは、もう、温もりさえ感じることが出来なくなっていた。


俺たちの幸せは、これから始まるはずだった幸せな生活は、何処に行ってしまったのだろう。



医師に聞くと、常位胎盤早期剥離という症状は、0.5%の人にしか訪れないらしい。
なんでしばゆーなんだと、何回思ったかわからない。
この症状は、出産してすぐに発症するもので、早期発見はほぼ不可能だという。
誰も攻めることは出来なかった。



家に帰ったら赤ちゃんのベッドもある。


カラカラのおもちゃもある。



なのに、赤ちゃんがいない。


しばゆーも、いない。




こんな空間にただひとりぼっちで、ただ泣き崩れる日々を送った。





葬式の日程が決まり、俺は重たい玄関のドアを開けた。
空はじっとりと湿っていて、梅雨を肌に感じた。



葬式場に着くと、しばゆーの親戚が集まっていた。

目の前には笑顔のしばゆーの写真。


棺桶の中を覗くと、花に囲まれたしばゆーが小さく収まっていた。
こんなに早くいなくなると思ってなかったから、葬式で何流したいかとか聞いてないよ。


そんな綺麗な顔で寝てんじゃねえよ。


俺をずっと笑わしてくれよ。



涙はとどまることを知らなかった。
しばゆーの手を強く強く握った。



すると、目の前が真っ白になった。















ふと気が付くと、俺は自分の部屋にいた。

さっきまで葬式場に居たのに、これはどういうことだ。
しかも、雨が降っていたはずの空は驚くほどに快晴だ。

あたりを見回すと、しばゆーが座っていた。
どういうことだ？何が起きている？

「しばゆー………？」

と不安げな声で呼ぶと、何？と返事が来る。


これは現実なのか。


「赤ちゃんは………？」

と言うと、意味がわからないといったような顔でこちらを見てくる。



信じ難いが、これはタイムスリップしてしまったという事だろうか。



しばゆーと俺たちの子供が死なない為に、俺はここで間違えちゃいけない。


「どうしたん？そんな険しい顔して」

「いや、ちょっと気分悪くて」

「まじ？ベッドで寝る？水持ってくるからちょっと待ってて」


しばゆーが率先して介抱してくれた。
あぁ、この手の温もり。紛れもなくしばゆーだ。
思わず、ほろりと涙が流れた。
すると、その様子を見てぎょっとしたのか、しばゆーは少し遠ざかった。

「なんで泣いた〜？？」

俺が過去から戻ってきたことは、多分言ってはいけない。
本能がそう言っていた。
俺は適当なことを言ってその場をかわした。



多分、俺としばゆーがまた番になってしまえば、常位胎盤早期剥離になる事は免れないだろう。
ならば、他の奴と番になってもらうしか、道はなかった。



1週間後、しばゆーの発情期が訪れた。
本来なら、俺がずっと一緒にいてあげる所だが、俺としばゆーがずっと一緒に居ることは出来ない。
だから、本当に申し訳ないと、ごめんと謝りながら、しばゆーのいる部屋にりょうを押し込んだ。
内側からは開けられないようにロックもした。


「おい！！！てつや！！！どういうことだよっ…！！！」

すでにしばゆーのフェロモンに充てられたのか、りょうの理性が危うかった。
でも、それでいいのだ。
ここで2人には番になってもらって、違う未来を歩んで貰うんだ。

「しばゆーのうなじを噛め……！」

「そんな事したらっ…番になっちまうだろ…！！！」

「てつや………なんで……っ」

しばゆーの声が聞こえ、ふと我に返った。
これは本当にしばゆーの為なのだろうか。
いや、今更そんな事を考えても仕方がない。
とにかくこの2人を番にさせるんだ。

すると何やら大きな物音がしたかと思うと、ドアが勢いよく飛んできた。
どうやらりょうが力ずくで壊したらしい。
あまりの出来事に、俺は口をあんぐりさせるしか出来なかった。
しばゆーも抑制剤を飲んで、なんとか抑えたようだった。

りょうに殴られる、と目を瞑ったが、それよりも先にしばゆーのビンタが飛んできた。
思わず目を開けると、涙を流して怒りを露わにしたしばゆーが目の前にいた。

「なんでこんなことした？」

怒りに震えた声。
俺はとんでもないことをしでかしたのだと、今更気付く。
俺は、今までの事を洗いざらい話した。



「………すぐには理解できないし、許してもないけど、てつやがこんな事するってことは、多分本当なんだと思う。でも、やり方が間違ってる。俺たちは付き合ってるんだから、番のこととかも一緒に話し合っていかなくっちゃ」

最後には優しい口調になる所に、しばゆーの優しさが滲み出ているなと思った。

「ごめん……もっとちゃんと話すべきだった……。
俺、どうしたらいいかわからなくて…………だって、しばゆーが目の前から消えちゃって、俺どうしたらいいかわからなくて………」

また涙が出そうになったが、ぐっと堪えた。


「取り敢えず、常位……なんとか剥離ってやつになることは確定なんでしょ？それを医院長に言っとけばほぼ100%大丈夫なんだよね？」

「うん……」

いつもはふざけてばかりいる癖に、急に頭いい所出しちゃって。
こうやって、真面目な時はちゃんと真剣に考えてくれるとことかに惚れたんだよなぁ、とか思っていた。


俺たちは、ちゃんと本当の番になった。
子供もちゃんと健康体で生まれてきてくれた。


助かることがないと、絶望の底まで叩き落とされたのに、今はとても幸せだ。
なぜタイムスリップしたのかは未だに分からないが、本当に感謝の言葉しか出ない。


今、腕の中に俺たちの子供がいる。

横に、笑ってくれる夫がいる。

そんな些細なことが本当の、本当の幸せなのだと心の底から噛み締めた。