※りょう→しばゆー(→てつや)という構図です。三角関係いける！って方はどうぞ→








りょうside


俺は今まで本当の天才がどんなものなのか、理解していなかった。
しばゆーに出会った日から、俺の人生はあっという間に色を変えた。

面白くて天才で可愛いこいつを俺が手放すわけもなく、あっという間にしばゆーをペットのように手懐けた。
しばゆーは俺の言うことを何でも聞くし、よくくっついて来た。
そんなことをされていくうちに、俺はしばゆーのことを好きになっていった。
日に日にしばゆーへの愛が重くなっていくのを感じた。


可愛い。虐めたい。泣かせたい。壊したい。

しばゆーは、俺のペットだ。
俺の言うの言うことだけ聞いていればいいのに。

しばゆーはよく、てつやの話をした。
てつやは天才なんだ、最高の相棒なんだと。
しばゆーはあまり笑わないが、てつやに対してはよく笑った。

俺だっててつやのことは好きだし、東海の愛すべきリーダーだと思っている。
しかし、しばゆーの事となるとどうしても俺は嫉妬してしまうようだった。
今まで考えたことの無い事ばかり思い浮かんでしまう自分に、嫌気が差した。

てつやより俺の方が清潔で、顔も悪くは無いし運動も出来る、はずなのに、勝てないのか。
しばゆーの心を動かすのは、てつやだけなのか。

なぜしばゆーなんかに自分が振り回されねばならないのかと頭を抱えた。

これは絶対に恋じゃない、そう自分に言い聞かせた。






しばゆーside



2℃を下回る岡崎の寒さは尋常ではなく、りょうくんの部屋に入る頃には、足が霜やけになっていた。
りょうくんの部屋に入って一息つくと、急に煙草が吸いたくなった。

煙草を右手で持ち上げた俺は、りょうくんに軽く叱責されてしまった。
怒られるとは分かっていても、吸いたくなってしまうのが喫煙者の性だ。

そう言いながらも、名残惜しそうに煙草を見つめる。
すると、見兼ねたのかりょうくんは渋々煙草を吸うことを承諾してくれた。

そう言いながらも、指の先まで冷えきっていたので満足に煙草を楽しむことが出来なかった。
1本だけ吸った後、俺はすぐに部屋に戻り、ストーブの前に座り込んだ。
手の指と指の間を限界まで広げてストーブに近付け、指の先をこれでもかと暖めた。

そんなことをしているうちに、俺はなんだか眠くなってきた。
視界がまどろむ。
もうこのまま寝てやろう、と思っていた矢先。

急に出た突飛な発言に、俺は思わず飛び起きて目を見開いた。
これはふざけているのか……？と笑おうとしたが、りょうくんの目がいつになく真剣で、思わず固唾を飲んだ。

驚いて声が出ない。いや出てるんだけども。
男同士で付き合うってこと？
えっわからんわからんてかりょうくんが俺のこと好きだったってこと？？
もう考えること多すぎる思考回路停止。

りょうくんのことは好きだけど、恋愛としての好きとは違う気がする。
断ろうか……でも悩んだ末に告白してくれたんだろうし、無下にするのはなぁ……。
いやいや、こんなかっこいいりょうくんに告白されて何悩んでんだ。OKしかないだろ。
でも、なんだろう。このモヤモヤは。
なせがてつやの顔が思い浮かんでしまう。
なんでこんな時に、もう意味わからん。
りょうくんに告白されたんだから、自慢できるやん。
よしっ決めた！

そう言うと、りょうくんは一気に力が抜けたようだった。
安心したような、綻んだ笑顔を向けられて、俺は思わず顔を赤く染めた。
りょうくんはずるい。
その顔で何人の女の子を落としてきたのか。
多分本人は気付いてないんだろうな。
とか思っていると。

笑って誤魔化す俺とは裏腹に、りょうくんはいつになく緊張した面持ちだった。
こんなりょうくんを見られるのは今しかないな、と思ったが、そんなことを言ったら絶対に殴られるので言わない。
俺は無言でキスをした。

りょうくんが俺の肩に手を置く。
次第に2人の息が荒くなっていく。
りょうくんが舌を入れてきて、思わず体が硬直した。
りょうくんが興奮しているのが伝わってくる。
なんだかとても恥ずかしくなってきた。
すると、りょうくんの手が俺の服の中に忍び込んできた。思わず小さな声が洩れる。

俺はますます恥ずかしくなった。
体に熱が籠っていくのを感じた。
こんなに幸せな状況なのに、なぜかまたてつやの顔が浮かんできた。
なんでこんな時に、と思ったが、自分がこの状況に対して物足りないと感じていることは、薄々気付いていた。
りょうくんの艶かしいキスよりも、てつやの汚いキスの方が幸せだと思ってしまうのはなぜだ、と思ったところで脳の思考回路をシャットアウトした。

りょうくんは、俺のズボンを脱がし、パンツの上から俺のものを撫でた。
ぴくん、と反応した俺を見逃さず、りょうくんは俺のパンツをずらして直接触った。

思わず声が洩れてしまう。
徐々に早くなっていくりょうくんの手は気持ちよくて、すぐにイってしまいそうになった。

あぁ、完全にいつものりょうくんだ。
ドSのりょうくんは1番イキイキしている。
俺自身の根元を長い指でキュッと締め付け、無理矢理イけないようにした。
しかしりょうくんの手は更に早く動き始め、俺は既に限界を迎えようとしていた。

俺は今何を言っているのだろう。
快感が身体中を駆け巡り、脳が上手く働かない。
あられもないことを言っているのだけはわかる。

そう言って、りょうくんは急に根元の指を外したので、俺は勢いよく射精してしまった。

やってしまった。ここまでやるつもりじゃなかったのに。
心の中に少しだけ罪悪感が残った。

































今日はりょうくんに遊園地に行こうと誘われた。
特に予定も無かった俺は、意気揚々と承諾した。
しかし、20代も後半にさしかかろうとしている俺達には子供たちの目が痛かった。

2人で観覧車に乗ったり園内のフードコートに居た間、りょうくんはずっと完璧の彼氏として俺をエスコートしてくれた。
友達の時と同じようで、少しだけ女の子の様に扱われることもあって、むず痒くなった。
でもなんだかどうしても、てつやとのおふざけが名残惜しい。
てつやといると、なんでも面白くて、このまま時が止まればいいのに、と思ってしまう程だった。

りょうくんは彼氏としては完璧だ。
でも、友達としてはどうしてもてつやと比べてしまう。
てつやと居る空間が楽しすぎて、いつの間にか俺はてつやの事を好きになっていたのだろうか。

りょうくんとデートに来ているのに、そんな事を考えてしまっている自分を心の中で叱責した。
























りょうside



しばゆーと付き合い始めて1ヶ月ほど経った頃、しばゆーから電話が来た。

順調に事が進んでると思ってたのに、しばゆーから電話がかかってきたと思ったらこれだ。
俺は一旦整理して、心を落ち着かせた。

とだけ言って、目から溢れてくる涙を必死にこらえた。

極めて自然に取り繕おうとしたが、若干声が震える。
電話でよかった。電話じゃなかったら多分俺は俺じゃなくなってる。
電話の向こうからは、不安そうな声が聞こえる。
やっぱり誤魔化せれなかったか……

そのあと俺は、自ら電話のボタンを切った。
そうでもしないと、俺の泣いている声が向こうに聞こえてしまうかもしれないから。
今までほとんど泣いたことは無かったのに、こぼれる涙が止まらなかった。


































いつかしばゆーが俺の家で吸っていた煙草の吸殻が、無機質な部屋の隅に置いてあり、異様な空気を放っていた。
早く捨ててしまえばいいのに、別れたあの日から好きでもない煙草が手放せない。
1本だけ吸った後、箱を全て置きっぱなしにしていったあいつを酷く憎んだ。
忘れたいのに、忘れさせてくれない。
1本取って吸ってみたが、勢いよく咳き込んでしまった。
しばゆーの香りを身に纏った俺は、嗚咽を漏らしながら酷く歪んだ顔で泣き続けた。
俺は、しばゆーのことをこんなにも愛してたんだな、と今更気付いてしまい、救いようのない自分を全て認めると同時に、ふっと笑いがこぼれた。

あの日々の事は、誰にも言わない。
俺たちだけの秘密。
こんな苦い思い出でも、俺には一生忘れがたい思い出なのだ。


今はまだ癒えない傷だが、10年後には笑って話せる日が来るだろうか。