第4話

不幸
95
2018/05/15 14:23
美琴
美琴
お邪魔します…
意外にも普通の一軒家。
古くも無く新しくも無い至って一般的な2階建ての家。
神谷光紀
神谷光紀
どうぞ。
家には誰もいないようだ。
というか、生活感がない。
リビングには小さなテーブルがあるのだが、その上にはなにも物がのっていない。
ここから見えるキッチンも食器一つ見あたらない。
美琴
美琴
ご両親は?
神谷光紀
神谷光紀
帰ってこない。
美琴
美琴
え?
神谷光紀
神谷光紀
親父も母さんも二人して出て行ったよ。
残されたのは人生で使い切れないほどの大金とこの家だけ。
神谷くんはいつも通り無表情で、低い声で、感情を出さずにすらすらと語る。
美琴
美琴
ごめんなさい、失礼なことを…
神谷光紀
神谷光紀
いいよ。
今はとりあえず早く終わらせよう。
美琴
美琴
はい。
私も神谷くんも黙々と本やパソコンと睨み続ける。
美琴
美琴
終わった…
作業を始めて実に3時間が経っていた。
神谷光紀
神谷光紀
もう8時…やべ、送るよ。
美琴
美琴
え、いいよ。すぐそこだし。
夏だからまだ外は少し明るい。
だが、神谷くんは送っていくと聞かない。
結局、素直に送って貰うことにした。
神谷光紀
神谷光紀
いいよな、普通の家族って。
美琴
美琴
そうかな…?
それは突然の質問だった。
でも、私にとって家族はそんなドラマに出てくるようなたいそう素敵な家族では無い。
神谷光紀
神谷光紀
うん。
親がいて、帰りを待って居てくれる。
それがどんなに嬉しいか。
久々に思い出したな。
美琴
美琴
…家族が居るから幸せって訳じゃあないよ。
神谷光紀
神谷光紀
…?
私は自分がなにを言っているのかわからないが、1人で自分事を話していた。
美琴
美琴
お母さんは冷たい人で、お父さんはそんなの見向きもしなくて、妹は私を捨て駒扱い。
幸せな家庭なんていえない。
幸せって名目で中身は泥が詰まっている。
神谷光紀
神谷光紀
……
黙り込む神谷くん。
私はふと、神谷くんの顔をのぞき込む。
神谷光紀
神谷光紀
一緒だな。
その表情はどこか、希望で満ち溢れていた。
美琴
美琴
どういうこと?
神谷光紀
神谷光紀
不幸せってところかな。
仲間じゃん、そういう意味では。
私の目からは無意識に涙が頬をつたっていた。
神谷光紀
神谷光紀
お、おい…
美琴
美琴
優しいね…グスッ
私なんて…両親に…どう復讐しようかとか…そんなことばっか…考えて生きてた…うっ…
涙が益々こみ上げてくる。
止まらない。洪水のように。今まで溜めていた涙全てこぼれてきた。
神谷光紀
神谷光紀
俺もだよ。
まあ、復讐はもう考えてあるんだけどさ。
美琴
美琴
どんなこと?
神谷光紀
神谷光紀
じゃあさ、教える代わりに俺と一緒に復讐をすることを誓ってくれないか?
神谷くんと復讐。
私は犯罪まで犯して復讐しようとかは考えていない。
美琴
美琴
殺しとか、犯罪行為がないのなら。
神谷光紀
神谷光紀
勿論。
私は覚悟を決めた。
神谷くんと復讐する人生を。
美琴
美琴
誓うよ、復讐するって。
神谷光紀
神谷光紀
…よし、最高の復讐を教えてあげる。
神谷くんはにこりと笑い悠々と語り出した。
それは実に華麗な復讐だった。

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