いつもこうだ。
自分の都合の良いことばかり。
妹にはお金をかけて、私は不要粗大ゴミ。
本当に嫌い。
でも──
仮面を何重にも重ね、自分を消すかのように母にニコリと微笑む。
──自分じゃない自分。
すべてを内に秘め、耐えていた。
ただ、中2の春。
彼らと出会ったせいか、方位磁針が磁石(彼ら)によって方向が曖昧になった。
でもそれが、私の幸せへの逆転劇の道だった。
名簿を見る限り知らない名前がずらりと並んでいる。
指定された席に着き、隣の席を見ると、神谷光紀という名前があった。
噂で耳にしたことは何度かある。
サッカー部で有名だった、かなりの強者らしい…。
神谷君に話しかけようとしたものの、一向に切り出せなかった。
そのとき、私の前の席の女の子が話しかけてきた。
コノは優しく、フレンドリーだった。
一人で友達のいない私に声をかけてくれたんだ。
するとコノは私の隣の席の神谷光紀君にも声をかけ始めた。
そう思ったら…
コノは神谷君のことを知っているらしい。
神谷君はコノを睨みつけている。
怖い人なのだろうか。でも、そこまで嫌っているようには見えない。
その声は私の後ろから聞こえてきた。
彼らが永遠とコントみたいな会話をして、私はずっと笑いをこらえながら見ていた。
心の底から笑ったことのない私にとって、その言葉は私の心を濁らせた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。