ー あなた side ー
海月のコーナーを抜けると白白とした照明が眩しかった
自然と私もマサイも目を細めた
少しだけ気まづい空気
海月のコーナーでのマサイの発言
あれを聞いて何とも思わない方が可笑しい
あんなの嫌でも意識してしまう
「 あ 、お土産あるね 」
「 買おうよ記念に何か 」
我ながら当たり障りの無い発言
お互いに刺激を与えないように
「 じゃあお揃いで買おうよ 」
このクソ鈍感やろー
今未成年の主張をするなら私はそう叫ぶ
「 そうだね 、 」
私は彼のお願いを拒否できない
此処に連れて来てもらったのもある
でもそれ以上にあの眼で見られると頷くしかない
何処までも澄んでいて純粋な
真珠の様な艶やかな瞳
そんな眼に自分が映るのは勿体ない
映りたい女子は山ほど居るだろうに
贅沢だって分かってる
でもフレームアウトしたいとは思わない
" 友達 " としてそこに映っていたい
異性の友情は無い 、なんて言われるかもしれない
それでも映っていたい
勿体なくても嫌じゃない
あの瞳に見詰められるのは何故だか心地良い
後ろ指さされても良い
コソコソ悪口を言われたって良い
私自身に危害を加えられても良い
彼らに察されないように私は出来るから
いつもと同じ笑顔で君の瞳に映るから
その真珠の様な瞳だけは汚さないで欲しいな
___ これはただの私の我儘だけど
「 あなた 、 ? 」
その声と共に現実に引き戻される
あぁそうだ今お土産を物色してたんだ
目の前にはマサイの整った顔
「 … マサイちょっと近いよ 」
内心心臓ばくばくで私は言葉を発する
これ程表情筋に感謝した事はない
普通の女子なら顔に熱が集まってしまうだろう
「 あ 、わ 、ごめん 」
距離の近さに気付いたからかマサイが 2 歩ほど後退した
その手には何やら銀色な何かが握られていた
「 マサイそれ 、何 ? 」
そう言ってマサイの手を指さす
「 これ ? 」
「 お揃いでどうかなって 」
広げた手にはイルカのストラップ
シンプルなデザインで誰が付けていても違和感がない
センス良いんだなマサイって
「 シンプルで良いと思う 」
それだけ答えて他のお土産に目を移す
各々買う相手が居るだろうから
同じ委員会の可愛い後輩
ダーマとモトキにはステンドグラス風ブックマーク
ダーマはカワウソ モトキはペンギン
マサイは今回のお礼も兼ねて
無難にクッキーと学校で使えるクリアファイルとペン
お兄ちゃんにも日頃の感謝を込めて
亀があしらわれたロングタオル
シルクはベルーガが好きだと言っていたから
ベルーガが描かれたコップ
値は張るかも知れないが日頃の感謝に比べれば
いつもかなり皆にはお世話になっているから
喜んでくれると良いな
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!