第105話

気 遣 い
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2022/03/31 08:00

ー あなた side ー



つい先程マサイの足取りが変わった

正確には私の手を握ってから …




手跡の事バレたかな 、、

マサイもだけど私の身の回りの人は心配症だ



かすり傷ですら慌てる

… 自分の怪我には疎いのに

私の事ばっかり気にかける



そういう所が好きだけど嫌い

私だって心配するし





… そんな事を考えながら歩いているとマサイの足が止まる

顔を上げるとそこは薬局だった

やっぱり手跡の事バレたか 、、




「 マサイ何で薬局 … 」

と念の為マサイに聞く

そう聞かれて振り返るマサイの顔は真剣だった


… これバレてるな

どうやっても誤魔化せない




「 言いたくないなら理由は聞かないけど 」

「 怪我は心配するし … 」


「 痛いなら痛いって言わないと 」


そう言ってマサイは私の腕を優しく引く




それが何時もより暖かく感じて

何故か少し痛みが和らぐ気がした






マサイにレジ横の椅子に座らされ

「 じっとしてて 」

と言われてしまった


店内は意外と広くてマサイは見当たらない

追い掛けたら行き違いそうだし …

じっとしててと言われているので動く訳にもいかない


主人の帰りを待つ犬はこんな気持ちなのか

待ち遠しくて少し寂しい


犬みたい吠えられたら …

そしたら主人は来てくれる


案外人間の方が不便なようだ





そんな事考えているとレジの音がして

マサイが買い物を終えたんだと気付いた


「 待たせてごめんね ? 」

そう言うマサイは手に湿布やガーゼがあった


「 あ … それお金 」

と言いかけるとマサイは首を横に振る


「 俺がやりたかっただけだから良いよ 」

でも … と言ったもののマサイは揺らがない


ここは有難く好意を受け取るとしよう

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