第108話

海 月
529
2022/09/02 08:00


ー あなた side ー


あれからマサイと水族館に入った

ペンギンもイルカショーも子供が沢山
休日だし人気な動物だから


でも私のお目当ては違った

もちろん他の魚も可愛い
可愛いけれど私の中では海月が 1 番


海月のコーナーは薄暗くて

照明が青や紫の寒色で統一されていた

海月は光に照らされるとより一層綺麗だ

何色にもなれる 、何かに囚われない

そんな海月が好きだ



「 綺麗だね 」


「 … うんそうだね 」


私の呟きに返事をしたマサイは私を見ていた

それがどういう意味かは理解していた

けれど理解していない振りをした

受け流していればいつかは忘れてくれる



「 マサイってさ写真撮るの得意だったよね 」

私は沈黙を破る為マサイに問う

少し前学校の写真コンクールで金賞を受賞していた


「 得意 … というか好きかな 」

そう言ってマサイは笑う

好きをあそこまで突き詰められるのは凄いな


「 じゃあ海月の写真撮ってよ 」

「 私じゃ上手く撮れないからさ 」

この海月をマサイとの思い出を形にしたい

写真を見た時に君を思い出せるように


「 最高の 1 枚にする 」

そう言ってマサイはカメラを構えた

何かプロみたいだ

慣れた手付きでカメラをいじってシャッターを切って

気付けばそんなマサイの姿に見惚れていた




「 あなた撮れたよ ? 」

「 ボーっとしてるけど大丈夫 ? 」


そう言ってマサイは私の顔を覗き込む

良く見ると目元もはっきりしてるし鼻も高い

… 顔 、整ってるんだな


「 あ 、大丈夫 」

「 写真ありがとう 」


「 印刷したらまた渡すね 」


そう言ってマサイは笑う

その笑顔は照明に照らされて輝いていた


「 … 海月みたいだ 」

私はボソッと呟いた

海月はどれだけ見ても飽きない

マサイもどれだけ見ても飽きない

見る度に様々な一面が見れる



「 俺はあなたの方が海月だと思うよ 」


マサイは微笑んで言う

え 、まさか聞こえてたの


「 … 聞こえてないと思った 」


ほんとに聞こえてないと思った

小さい声で言ったし水族館はざわついてるから


「 あなたの声なら聞き逃さないよ 」

「 どんなに小さい声でもね 」


その笑顔もまた ___ 証明に照らされていた

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