ー あなた side ー
あれからマサイと水族館に入った
ペンギンもイルカショーも子供が沢山
休日だし人気な動物だから
でも私のお目当ては違った
もちろん他の魚も可愛い
可愛いけれど私の中では海月が 1 番
海月のコーナーは薄暗くて
照明が青や紫の寒色で統一されていた
海月は光に照らされるとより一層綺麗だ
何色にもなれる 、何かに囚われない
そんな海月が好きだ
「 綺麗だね 」
「 … うんそうだね 」
私の呟きに返事をしたマサイは私を見ていた
それがどういう意味かは理解していた
けれど理解していない振りをした
受け流していればいつかは忘れてくれる
「 マサイってさ写真撮るの得意だったよね 」
私は沈黙を破る為マサイに問う
少し前学校の写真コンクールで金賞を受賞していた
「 得意 … というか好きかな 」
そう言ってマサイは笑う
好きをあそこまで突き詰められるのは凄いな
「 じゃあ海月の写真撮ってよ 」
「 私じゃ上手く撮れないからさ 」
この海月をマサイとの思い出を形にしたい
写真を見た時に君を思い出せるように
「 最高の 1 枚にする 」
そう言ってマサイはカメラを構えた
何かプロみたいだ
慣れた手付きでカメラをいじってシャッターを切って
気付けばそんなマサイの姿に見惚れていた
「 あなた撮れたよ ? 」
「 ボーっとしてるけど大丈夫 ? 」
そう言ってマサイは私の顔を覗き込む
良く見ると目元もはっきりしてるし鼻も高い
… 顔 、整ってるんだな
「 あ 、大丈夫 」
「 写真ありがとう 」
「 印刷したらまた渡すね 」
そう言ってマサイは笑う
その笑顔は照明に照らされて輝いていた
「 … 海月みたいだ 」
私はボソッと呟いた
海月はどれだけ見ても飽きない
マサイもどれだけ見ても飽きない
見る度に様々な一面が見れる
「 俺はあなたの方が海月だと思うよ 」
マサイは微笑んで言う
え 、まさか聞こえてたの
「 … 聞こえてないと思った 」
ほんとに聞こえてないと思った
小さい声で言ったし水族館はざわついてるから
「 あなたの声なら聞き逃さないよ 」
「 どんなに小さい声でもね 」
その笑顔もまた ___ 証明に照らされていた
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。