あのチラシを見てからは何もやる気が出てこなかった。
早く寝ようと布団に潜り込んだはいいが、目が冴えてしまい眠る事ができずギリギリの登校になってしまった。
先生は既に教室に入っていたようで、慌てたような声を上げている。
ドアから顔を出すと、私の存在に気づいたのか莉桜ちゃんは私の手を引いた。
私の左隣には、莉桜ちゃんが汚物を見るような目で鋭く先生を睨んでいる。
慌てる先生、汚物を見るような眼差しで先生を見るみんな。
カオス極まる現状に、先程まで落ち込んでいた心が徐々に消えていき笑いが込み上げてきそうになった。
笑っていられるのも今のうちだ。
私はこの記事が嘘だと信じたいが、言い逃れできないほどに特徴が殺せんせーと一致している。
となると、みんなは殺せんせーを軽蔑するだろう。
がっかりした、と言いたげに鋭く睨みつけているひなたちゃん達を前にして、先生は狼狽えている。
必死に違うと否定する先生は、もげてしまうんじゃないかというほどに触手を左右にぶんぶんと振っている。
慌てる先生に、凛香ちゃんは冷静に問う。
いつにも増して凛とした声で。
明らかに証明する事が難しいアリバイ。
そもそも先生はマッハ20の超生物だ。
アリバイがあったとしても、一瞬で移動できてしまう先生を目撃するなんて困難。
アリバイがあっても意味が無い事なんて、私たちには理解っていたはずだ。
きっと、怒りや悲しみで正常な判断ができていないのだろう。
じゃあ、私が────!
私が何を言ってもだめ。
先生の疑いは更に増す一方だ。
どうしたら…どうしたら先生の疑いは晴れるの?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。