第16話

story sixteen
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2018/07/25 23:49
ひらみへ
急にいなくなってごめんな。お前に迷惑かけたくなかったんだ。きっと、優しいお前なら俺のことを止めるんだろうなって思ったからな。

俺たち死神は前にも言ったが、人間を死の世界まで案内することが仕事なんだ。そのために生まれてきた。だから、裏を返せばその仕事に適さないやつは、生きている意味がないってことなんだ。
今までの俺は、自分が死にたくないから人を必ず殺すようにしていた。俺だけじゃない、みんなやっている。この仕事は命がけなんだよ。でもな、お前に出会ってから何かが変わったんだよ。ひらみに死んでほしくないって思い始めた。
だから、俺はお偉いさんのところに行って交渉してきたんだ。だけどそのお偉いさん、めちゃくちゃ頑固でなかなかおっけーしてくれないんだよ。でもね、やっとおっけーもらったから、お前を生かすことができた。
でも、俺はもう二度とお前に会えなくなってしまった。ごめんな。
仕事ができない奴は消えてなくなるっていう決まりなんだ。だから、俺はひらみに会いたくても会えなくなっちゃった。

俺、ひらみと出会えて本当によかったよ。夏祭りに花火に、すごく楽しかった。
かき氷、今度は緑のを食べて見たかったな。俺が射的でとったクマのぬいぐるみ、大切にしろよ?

もうちょっと一緒にいたかった。もし、俺が人間としてひらみに会っていたら、なんてたまに考えるんだ。そっちの方がきっと長くいられた気がするし。

俺は、ひらみのことを忘れないから、ひらみも俺のことを忘れないでくれ。

ずっと空から見ててやるよ。夏にまた会えたらいいな。

じゃあ、元気でな。

大好きだ。
クロより

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